第170夜:勝洋さんの正吉写し(3)
勝洋さんは昭和60年代から佐藤(大原)正吉のこけしの写しを何回か作っているが、久し振りの挑戦になった。今回送られてきたのは1本だけだったので電話で確認したが、数本作っており白石のコンクールにも出品するとのこと。あと2本ほど送ってくれるよう依頼した。この1本は勝洋さんが最も出来の良いものを選んでくれたものと思う。写真(2)右が「原」こけしで、左が写しである。先ず木地形態は、ほぼ「原」通りとなっている。次ぎに胴模様であるが「原」はぼってりとした菊を三段に重ねている。1つの花は大きな赤点2つの間に大きな緑の芯を描いたような様式で、1つの赤点の左右から花弁を水平に2筆で描いているようであるが、一番上の花は向かって左が5筆、右が4筆、真ん中の花は左が4筆、右が5筆、一番下の花は左が4筆で右が5筆となっている。筆数を意識したのではなく、その時の筆の勢いで描いたものであろう。勝洋さんの写しの花弁は左右きちんと4筆ずつで、「原」と比べると先がやや寝ている。添え葉も忠実に描いているが、やや自身の癖が出ているようだ。胴上下の2本の紫ロクロ線は、間がやや空いているが、これは詰めた方が重厚な感じが出て良いと思う。次ぎに頭部の描彩であるが、赤い鬢飾りが「原」は水平で筆数が多いのに対して、写しはやや寝ており本数も少ない。これは花弁と同様でどうしても描き慣れている癖が出てしまうのであろう。最後に面描である。顔のかなり上の部分に寄った眉と目、眉の位置から描かれた横鬢など相当「原」に忠実に描いているのが分かる。そのためか筆の勢いは今一つか。正吉こけしの面描では、鬢寄りの大きな眉とやや中央、鼻寄りの目が特徴的であるが、勝洋さん自身の面描は眉と目が上下に揃って描かれる。これは勝洋さんも十分に分かっていることなのだが、今回も自身の描彩になってしまっていた。この辺りはもう写しの限界なのであろう。辛口できりっとした表情は良く出ているが、正吉こけしの持つ「気品」までは再現できなかったように思える。しかしながら、写しは大変な作業である。こちらの勝手なお願いを嫌がらずに聞いて頂いた勝洋さんには、改めて感謝したいと思う。
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