第178夜:津軽こけしの源流を求めて(今晃1)
今さんのこけしに関しては第一人者であるSUGUAN氏のブログで詳細に述べられているので、私がここで話すのも気が引けるのであるが、SUGUAN氏が紹介している時期と少しずれるので書いてみたい。SUGUAN氏によれば、今さんが鳴子の修業から帰ってきたのは昭和56年で、翌57年の1月から津軽でのこけし製作が始まったとある。当初は金属団地に住んでおり、10月に禰宜町に移り、58年5月末には嶽温泉に移って製作を続けている。SUGUAN氏のブログの第1回に掲載されているのが、本稿と同じ辰雄型重ね菊で、このこけしは21回、34回でも昭和57年作が紹介されている。中でも4月作が一番充実しているとされる。
さて、本稿のこけしは昭和58年1月8日に下井草の民芸店「おおき」で入手したものである。大きさは6寸であるが、それ以上の大きさを感じさせるこけしである。当時「おおき」のご主人の大木幸蔵氏は今さんのこけしに力を入れており、大小様々な今こけしが入荷していたと思う。しかし私は他のこけしに関心がいっていて今こけしはあまり入手しなかった。今思えば惜しいことをしたものである。本稿のこけしは57年末から58年頭にかけて作られたものと思われ、従って禰宜町時代の作である。SUGUAN氏のブログにある57年作と比べると、木地形態は胴裾が広がっている。面描では眼点が下の瞼寄りで、しかもきっちり丸く描くのではなく、筆先でチョンチョンと描いているため一種異様な雰囲気を感じさせる。それが津軽の源流のこけしの持つおどろおどろしさと共通点を持つような気がするのである。この時期の今こけしはもっと追求したいこけしである。
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