第185夜:津軽こけしの源流を求めて(恵介6)
先ずは「盛秀一家のこけし辞典(Ⅲ)」で恵介さんのこの型のこけしを調べてみると、製作No97<H15.4.1>作が載っている。少しおとなしめであるが「原」の雰囲気を良く表わしたこけしである。赤い頬紅が愛らしい。さて本稿のこけしは写真右5寸、No440<H16.8.16>作、左4寸、No1258<H18.4.7>作。右5寸は「原」と同じ大きさであるが、こけしの雰囲気はかなり異なる。頭がやや縦長(「原」は横長)ということもあるのであろうが、面描が「原」より遙かに豪快になっているのが目を惹く。最初にこのこけしを見た時にはその大胆さに度肝を抜かれた。特に目と口が断然大きい。「原」は小さな目に凄みがあるのであるが、このこけしは大きく見開いた目で異様な笑いを浮かべている。そこには源流の津軽こけしが内包しているグルーミーな笑いに通じるものが感じられる。このH16年に作られた一連の作は、恵介さんなりに追い求めた津軽こけしの源流と言えるのでないだろうか。左4寸は小寸ということもあり口も小さくなって異様な凄みはやや薄れてしまった。
ここまで、盛秀古型として大正から昭和初期に作られたこけしを、恵介さんの写しを通して見てきた。一見して分かるようにこの時期の盛秀こけしの特徴の1つは、目が紡錘形になっていることである。これは盛秀さんの長いこけし製作の中でもこの時期だけである。この後、一側目、両瞼が上に凸の二重や鯨目が多くなるのであるが、それらのこけしについてはまた別の機会に紹介していきたいと思う。
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