第199夜:鳴子駈け歩き(1)
鳴子の駅から徒歩1分の「福寿の店」は以前と変わらない佇まいを見せているが、店の中で以前こけしや木地製品等の土産物が置かれていた場所は植物の鉢植えに占領されていた。こけし等を挽いていた作業場にも鉢植えが置かれている。店の中程の棚にはソニー頒布で作った福寿さんの新伝統こけしや描彩途中の達磨が並べられている。また奥の棚には福寿さんの旧作もあったが、こちらは地震で倒れた状態になっていた。店先で声をかけると節子さん(福寿さんの奥さん)が元気な顔を見せてくれた。土曜まで旅行に出ており、帰宅後私からの訪問の手紙を見たとのことで運が良かった。
奥の間に足を踏み入れると、あの福寿さんが「よう、よう、よく来たね。まあ上がって」と出てくるような錯覚に襲われる。余りに突然の死だったので、私の中では生前に会った時で時間が止まっているのである。2階の仏壇で福寿さんに焼香。昨年が7回忌だったので、もう7年経ったことになる。同級の正吾さんや秀雄さん、更には年長の松一さんや昭二さんなど、こけしブーム期を支えた工人方はまだまだ元気であり、福寿さんも未だそういう年だったのにと悔やまれる。
さて、今回の訪問には幾つかの目的があった。福寿さんの新型(創作)こけしのこと、福寿さんの署名のこと、それから昨年入手した盛大正型(第116夜参照)のことである。多くの伝統こけしの収集家・愛好家は新型こけしには目もくれないであろうし、もちろん私もそうなのであるが、福寿さんのこけしに関しては新型(創作)も含めて集めている。それは福寿さんにとっては旧型も新型も分け隔て無く、どちらも「福寿こけし」として存在しているからなのである。以前私は「福寿のこけし」という小冊子を作ったことがあるが、その改訂版を出す時には新型(創作)こけしも含めようと福寿さんと約束していた。今回はその下準備でもあった。幸い節子さんのところには新型(創作)こけしが多数残されており、それを見せて貰うことが出来た。
写真①は数年前に入手した福寿さんの創作こけし。木地形態は完全に創作であるが、胴模様は伝統的な菊模様であり、面描にも旧型の趣が残っている。節子さんは、このこけしは見たことがないとのことであった。しかし胴の形態が同じこけしを持っていた(写真②右2本)。いずれも彩色は墨に赤を入れた程度のものであるが、1本は何かの花模様で、もう1本はもっと写実的な風景が描かれている。①では両瞼の間に眼点を入れた所謂勘治風の目であるが、今回見た2本は一筆目。典型的な新型こけしとなっている。このことから①は福寿さんが未だ独身の頃に作っていたもの(従って昭和30年代初め頃か)、②の右2本は結婚して後(昭和32年以降)に作ったものであることがほぼ判明した。また①の首は回らないが、②の2本は胴部へのゆるい嵌め込みとなっており、南部系のようにクラクラと動く。②の右から3本目は「縄文こけし」、同4本目は「南国の踊り子」でこれも頭はクラクラ動く。同5本目は「みちのくの夢」、左から2本は「みちのくの風」とのことであった。これらは何年かに渡って作られており、その時々によって多少作風に違いが見られるようだ。
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