第209夜:芳蔵の本人型(2)
ここのところ体調が思わしくなく更新が滞ってしまった。東京こけし友の会の例会で、入札は大きな楽しみの1つである。27日に開催された7月例会では都合10本の入札品が並んでいた。やはり一番目を惹いたのは尺5寸の大野栄治。どうしようか迷ったが結局大きさの点で断念した。佐藤正吉も良かったが胴に水流れの跡があったのと、この時期のものは既に1本持っているので見送り。長次郎も表情は良いのだが胴の緑が全く無くなっているので見送り。文吉も胴の退色があるが良い時期のもので心が動かされたが高値が予想されたので見送り。結局、佐藤円吉と岩本芳蔵に対象を絞った。結果、円吉は応札も多く価格的にも激戦で結局落選、芳蔵は次点に差を付けての落札となった。そのようにして私の所にやってきた芳蔵本人型を今夜は紹介しよう。
第163夜で述べたように、芳蔵の本人型に興味と魅力を感じたのは友の会の「談話会」に出てからである(第109夜参照)。今回出品されていたこけしが芳蔵の本人型であることは直ぐに分かったが以前に入手したものとの違いは、その場でははっきり分からなかった。でも取りあえず入手しておきたいと思ったのである。今回入手の芳蔵本人型の一番の特徴は目の描法であろう。談話会で見た芳蔵本人型(5本)の目はすべて善吉型のように上瞼と下瞼が外に膨れた紡錘型であった。また「らっこコレクション図譜」に載っている戦前の芳蔵本人型5本も同様。従って今回のような下瞼も上に凸の三日月形の目は文献等でも見たことがないのである。
写真2で前回(第163夜)の本人型と比べて見た。先ず木地形態。頭の形が全く異なる。前回作(左)はラグビーボールのような横長の楕円形であるのに対して、今回作(右)は頭頂部が平たいお椀形。肩の張りも右の方がやや強く、全体的には左が丸い感じなのに対して、右はやや角張った感じである。次に描彩であるが、頭頂部のロクロ模様、前髪、赤いリボンの付いたお下げ髪状の横鬢、眉、鼻、口、頬紅などは全く同じと言って良い。唯一の違いが目の描法なのである。このような三日月目がどうして描かれたのか、浅学の私には今のところ分からない。何かご存知の方があればお教え願いたい。
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