第210夜:写しと型(考)
輝幸さんの写しの元になったこけしは、平賀貞蔵作9寸9分(昭和16年1月)で久松旧蔵品、「こけしの世界」《392》である。飴色になっており緑色は殆ど飛んでしまっている。名古屋こけし会の頒布便りにあるように「明るく強い」表情のこけしである。表情の素晴らしさでは貞蔵作の中でも最右翼の当たるものではないかとも思う。尺の大寸であるが胴下部の台にあたる部分が胴全体の1/3を占めているほか、胴上部1/3にはロクロ線が引かれているために胴模様を描くスペースが少なく、蟹菊は1輪しか描かれていない。
さて、輝幸さんの写しであるが、約尺の大きさを8寸強に縮尺している。木地形態は頭がやや縦長と思われるが、ほぼ完璧に写していると言えるだろう。緑の色が蘇ったことにより、原こけしの作られた当時の華麗さが彷彿される。眼は切れ長の三日月眼に近く、鋭い表情をよく再現している。写しとしては成功の部類に入るであろう。
写し(特に古作の)を作って貰うのはこけし収集の醍醐味の1つであり、私も何本かお願いして作って貰っている。最近、写しについて考えることが多く、その経緯などを調べてみた。写しは戦前にも鈴木清の胞吉型等が作られていたが、戦後の新型こけしや旧型こけしの一般型に対抗するものとして、こけしの愛好家・収集家の働きかけによって生まれたものである。昭和30年代、鳴子や遠刈田では所謂一般型と言われる画一的なこけしが大量に作られ、個性の乏しいものとなっていた。この写しの流行は一般型から各々が個性を持った明治・大正から昭和初期のこけしを目指すものでもあった。(続く)
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