第227夜:津軽こけしの源流を求めて(恵介7)
このこけしの「原」になる盛秀こけしは西田コレクションにある8寸2分である(図譜「原郷のこけし群(第1集)」のNo2)。木地形態では胴裾がラッパ状に広がり、黒頭に「前髪」と呼ばれる赤い点状の飾りを付け、湾曲した鯨目を描いた野趣溢れる傑作である。恵介さんのこけし、写真(2)右(8寸)は、No186<03.9.12>で「原こけし」を忠実に写したもの。形態、特に胴裾のラッパ状の曲線とそこに引かれた太い赤ロクロ線まで忠実に再現している。そして何と言っても一番の見所は、鯨目を中心とした顔の描彩だろう。特に下瞼の目頭が上に湾曲して上瞼の目頭に繋がる(実際には繋がっていないが)ような方向にあるのは、紡錘形の目との関連性を窺わせる(即ち、紡錘形の目の変形が鯨目になった?)。恵介さんの目は明るく、盛秀こけしのような凄みはないが、津軽の源流を目指した意気込みは十分に感じられ、この型の代表作と言って良い作であろう。写真(2)左はNo371<04.6.10>で同型のこけしであるが、忠実な写しではなく恵介さんのアレンジがかなり入っている。頭が大きく、胴も太くなって胴裾もラッパ状の広がりがない。頭頂の黒頭の部分がかなり下がってきて、その分顔の描彩も下に描かれている。そして一番の違いはやはり鯨目の描法であろう。上瞼の目尻が下がり、下瞼も上に凸の単純な描法で、愛らしいこけしになっている。この両者の製作日の違いは僅か9か月であるが、こうして両者を並べてみると、その違いは歴然としているのが分かるのである。
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