第226夜:久太郎のこけし(2)
こけしの世界では、なかなか入手出来なかったこけしを1本入手すると、同工人のこけしを続いて入手する機会がよくあると言われる。逆にせっかく入手する機会があったのにそれを逃してしまうと暫くそのこけしと出会わなくなることもある。要はチャンスがあったら逃さずに手に入れなさいということなのだろう。そのため入札での値決めには頭を悩ますことになる。もちろん財布に余裕があれば思いっきり高値をつければ良いのであるが、懐には限りがあり、また自分の入札価格に対して他の人がどう思うかということも気になることではある。一応自分が決めた価格に対して、もう少し安くしても落ちるだろうと思って手加減すると、まず後悔することになる。今までにそういうことは多々あり、経験的にも分かっているのに同じ過ちを犯してしまうのは人間の業なのであろうか。昨日の友の会の入札がまさにそれであり、戒めのためにここに記すことにした。さて、本論は昨日入手した久太郎さんのこけしである。
ヤフオクで昭和29年頃の久太郎こけしを入手したことは前に書いた(第223夜参照)。その頃のこけしは久四郎を模したものではなく、久太郎さん自身のこけしと言って良いものであった。その後、昭和33年5月に東京こけし友の会の木地山訪問があり、これを契機に久四郎の摸作を始めたとある。その時のこけしは「小椋久太郎と第十回伝統こけし三十人展」の記念誌に掲載されている。
写真(2)左が今回入手したこけし(右は29年作)。胴底に「S35」との記入があり、35年頃の作と思われる。木地形態は久四郎を模したものであり、前j述の記念誌に載っている33年の旅行会の時の久太郎こけしと変わらない。描彩もほぼ同様と思えるが、本作は前髪と横鬢が離れているためにやや印象派異なる。29年作は表情瑞々しく、前垂れも上に上がって凛々しい乙女を表しているが、本作では表情がややおっとりとして、何かを訴えかけるような眼差しになっている。前垂れが下がったこともあって成熟した女性を感じさせる。なお、前垂れの一番上の梅模様に付いている4点模様は29年作では左右の2つであるが、33年以降は左右の他に真中にも入り3つになっている。これは、それ以降変わらないようだ。
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