第246夜:修一さんの岡長写し
先週(25日)の東京こけし友の会の新年例会には、山形の梅木修一・直美のお二人が招待工人として参加されたことは前回書いた。今夜はそのお二人にちなんだこけしを紹介したい。私は修一さんの岡長型こけしが好きで、当初からそのこけしを集めていた。そのこけし達は「梅木修一の岡長型」という小冊子に纏めたのであるが、私の夢は自分の岡長こけしの写しを修一さんに作って貰うことであった。しかし肝心の岡長こけしとは縁がないまま月日は経っていった。そうして1年半ほど前、友の会の入札に岡長こけしが出品されたのである。尺2寸の堂々たるこけしで、特にその表情に一目ぼれして運良く入手することが出来た(第85夜参照)。そのこけしの写しが出来たのである。
友の会で岡長こけしを入手した私は、その写しを修一さんにお願いする機会を窺っていた。昨年は友の会の創立55周年にあたり、その記念旅行会が10月にあって、みちのくこけしまつりへの参加もスケジュールに含まれていた。そのみちのくこけしまつりの会場で修一さんと会うことが出来た。久しぶりのため修一さんは私のことが直ぐには分からなかったようであったが、小冊子のことを話すと直ぐに思い出してくれた。修一さんはお客さんの対応に忙しくなかなかゆっくり話をすることが出来なかったが、ようやく時間をみつけて岡長こけしの写真を見せ、写しの製作を依頼した。実はこの時、私の頭には1つのアイデアがあった。単に大寸の岡長こけしの写しを作って貰うだけではもったいない。修一さんの木地技術は抜群。前にも5本の入れ子こけしを作って貰ったこともある。今回も中をくり抜いて何かを入れて貰おうと。中に入れるのは最近工人さんが良く作るようになった「雛」にして、それは娘の直 美さんに作って貰おうと。こんな面倒なお願いをしたのだが、修一さんは二つ返事で了解してくれた。11月に入ってから岡長の「原」を送り、待望のこけしが届いたのは12月17日であった。写しの出来は写真(2)の通り。修一さんもこの3月で80歳、出来に多少の不安はあったのだが、ものの見事に裏切られた。脱帽である。あの昭和50年代前半の木地挽き、描彩力にいささかの衰えも感じさせない完成度である。頭髪の微妙なカーブ、太い眉にかしげたような円らな瞳、「原」のアンバランスな横鬢はさりげなく整えている。素晴らしい写しの完成に喜びを禁じえない。
そして、胴中ほどで上下に分けると、中にはまるでかぐや 姫のように男雛と女雛が入っているのである。中に入れる雛については全て修一さんにお任せした。そればかりか雪洞と屏風もきちんと入るように考えられている。修一さんも色々と苦労されたそうである。同封の手紙にはどのように中に収めるかが図解で示されていた。隙間を埋めるためのものと思ったボール紙が屏風に変身するとは思わなかった。雪洞は組み立て式で、蓋状の円盤の突起に差し込むようになっている。男雛、女雛とも頭の冠は突起状にして、重ねて収める特に安定するように工夫されている。直美さんの描彩も愛らしい。
写しと雛飾りと1本で2度も楽しめる素晴らしいこけしが出来上がった。ご苦労をおかけした修一さん、直美さんには改めてお礼を申し上げたい。
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