« 第248夜:大野栄治のこけし | トップページ | 第250夜:友の会2月例会 »

第249夜:佐久間俊雄のこけし

Toshio_s55kasa_kao 土湯系湊屋の佐久間俊雄のこけしは人気が高く入手難のこけしの一つである。東京こけし友の会では、昨年その佐久間俊雄のこけしが纏まって頒布された。俊雄のこけしは小寸ものが多く、8寸以上のものは殆ど見かけない。昨年の友の会でも3本しか無かった。私もこの時の頒布では小寸の地蔵型を2本入手しただけであった(第80夜参照)。最近、1本の俊雄のこけしを目にし、その表情に魅せられてしまった。今夜はそのこけしを紹介したい。

佐久間俊雄の経歴等を詳しく記した文献は見当たらない。「伝統こけしハンドブック(緑書店:昭和56年7月発行)」によれば、佐久間芳雄の長男で昭和23年の生まれとのこと。こけしは昭和52年頃からのものが知られている。初期のものは目が大きくぱっちりとしていて若々しいこけしである。昭和53年頃には目の湾曲がやや大きくなって笑顔の優しい甘美なこけしとなる。54年頃になると湊屋の特徴である下瞼の長い目でアルカイックの表情となる。55年頃から目尻が上がるようになって鋭い表情となる。この傾向は更に強くなり、58年頃からは休業状態になってしまう。

Toshio_s55kasa 本稿のこけしは55年12月に俊雄本人から送付して貰ったとのこと。太めの三角胴で頭が小さく、小振りの傘を被っている。描彩は傘も含めて赤と黒の二色。胴中央部の赤い稲妻模様が強いインパクトとなっている。傘の縁は黒で傘の裏側も赤が塗られており、傘の下からは細い線で1本1本頭髪を描いている。細かい頭髪とは対照的に横鬢はバッサリ斜めに描いている。細い筆致で描かれた眉目は目尻が吊り上り、黒く打たれた眼点が鋭い。二筆の口は下側がやや右寄りに描かれて、かすかな微笑みを浮かべている。見ようによってはニヒルな表情ともとれる。じっと見つめていると、何かを語りかけてくる。このような表情のこけしには滅多に出会わない。俊雄の代表作に挙げられるこけしだと思う。

|

« 第248夜:大野栄治のこけし | トップページ | 第250夜:友の会2月例会 »

土湯系」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 第249夜:佐久間俊雄のこけし:

« 第248夜:大野栄治のこけし | トップページ | 第250夜:友の会2月例会 »