第249夜:佐久間俊雄のこけし
佐久間俊雄の経歴等を詳しく記した文献は見当たらない。「伝統こけしハンドブック(緑書店:昭和56年7月発行)」によれば、佐久間芳雄の長男で昭和23年の生まれとのこと。こけしは昭和52年頃からのものが知られている。初期のものは目が大きくぱっちりとしていて若々しいこけしである。昭和53年頃には目の湾曲がやや大きくなって笑顔の優しい甘美なこけしとなる。54年頃になると湊屋の特徴である下瞼の長い目でアルカイックの表情となる。55年頃から目尻が上がるようになって鋭い表情となる。この傾向は更に強くなり、58年頃からは休業状態になってしまう。
本稿のこけしは55年12月に俊雄本人から送付して貰ったとのこと。太めの三角胴で頭が小さく、小振りの傘を被っている。描彩は傘も含めて赤と黒の二色。胴中央部の赤い稲妻模様が強いインパクトとなっている。傘の縁は黒で傘の裏側も赤が塗られており、傘の下からは細い線で1本1本頭髪を描いている。細かい頭髪とは対照的に横鬢はバッサリ斜めに描いている。細い筆致で描かれた眉目は目尻が吊り上り、黒く打たれた眼点が鋭い。二筆の口は下側がやや右寄りに描かれて、かすかな微笑みを浮かべている。見ようによってはニヒルな表情ともとれる。じっと見つめていると、何かを語りかけてくる。このような表情のこけしには滅多に出会わない。俊雄の代表作に挙げられるこけしだと思う。
| 固定リンク
「土湯系」カテゴリの記事
- 第990夜:「日本の郷土玩具」展(2015.01.10)
- 第988夜:二代目虎吉のこけし(2015.01.05)
- 第984夜:初期作の味わい(勝英)(2014.12.21)
- 第983夜:42年の弘道こけし(2014.12.19)
- 第981夜:友の会12月例会(H26年)(2014.12.14)
コメント