第266夜:ヤフオクの古品(小椋久太郎)
久太郎の経歴等は第224夜で示した。本稿のこけしは大きさ8寸4分。ほぼ同寸の224夜のこけし(昭和20年代後半)と並べたものを写真(2)に示す。木地形態では、先ず頭の形が異なるのが分かる。向って左のこけしの頭が紡錘形なのに対し、本こけしは頭頂部が大きく平たい。面描は上方に寄り、きりっとした視線はまっすぐ正面を向いている。口の紅が小さいためか表情からは笑みは感じられない。(左のこけしは口の紅が大きく、笑みを浮かべており表情にも余裕が感じられる) こうして並べて見ると、製作年代とともにこけしも成長しているかのように思える。さてこのこけしの製作年代であるが、「愛こけし」147頁に掲載されている左2本のこけしと比べてみると、昭和16年前後と推測される。
ここで胴模様について考えてみたい。久太郎のこけしは昭和7,8年頃の所謂久四郎摸作時代を経て、昭和12年頃から19年頃までの団子梅の時代となり、戦後の久四郎風の完成期に入るとされる。従って、団子梅時代が久太郎自身の個性が最も表れたこけしと言えると思う。さて、この「団子梅」であるが、これは梅花が久四郎のように横に広がったものではなく、丸く描かれたものと説明されている。写真(2)を見て頂きたい。右が本稿のこけしで昭和16年頃、左が第224夜のこけしで昭和20年代後半(と推定した)。ところで両者の梅花に違いはあるだろうか? 殆ど同一と言って良いであろう。右の梅花を「団子梅」と言うなら、左の梅花も「団子梅」であろう。第224夜では、「第十回伝統こけし三十人展」の記念誌に記載された昭和29年作の久太郎を元に年代推定を行ったが、今改めてその写真を見ると、胴の梅花は久四郎風に横広となっている。従って、第224夜の久太郎はその製作年代をかなり遡れるものと思う。そしてそれは団子梅時代の年代特定にも絡んでくるであろう。この団子梅の胴模様は昭和20年代の前半辺りまでは描かれていたと考えられる。
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