第268夜:ヤフオクの古品(小椋石蔵)
木地山系の小椋石蔵は明治16年の生まれ、木地山の小椋徳右衛門の5男で久四郎の弟にあたる。父徳右衛門と久四郎について木地を習い、こけしも作ったとされる。大正元年に北海道に渡り、昭和元年からは小樽に定住した。現在確認されているこけしは昭和11年に石井真之助氏に発見されて復活してから昭和18年頃までに作った戦前作と、昭和30年以降の描彩のみの作品。復活初期の作は木地形態では肩が大きく張って直胴に近く、表情には気品があり、隙間なく緻密に描かれた胴の模様には団扇や竹籠が描かれている。昭和15年以降になると形態では肩の張りが少なくなって裾が広がった三角胴のような形となり、表情・描彩とも充実感が乏しくなってくる。
さて、本稿のこけしであるが、大きさは尺。退色が殆ど無く今回の古品群の中では状態が抜群に良い。他のこけしと一緒に飾られていたのではないと思われる。ただ、木地の隙間に白い粉のようなものが入ってしまっていて鮮やかさには欠ける。胴上部、肩の張りが少ない形態のため胴長な印象を受ける。面描には気品があり復活当初の雰囲気を保っているが、襟の合わせ目が下がってきて胸の地肌が覗くようになって、ややだれた感じを受けなくもない。昭和14、5年の作であろうか。復活当初に比べると作行きの低下は否めないだろう。とは言え、胴模様もしっかりと描かれており、石蔵こけしとしても水準以上のレベルを保っており、保存状態の良さも相まって、今回の古品群の中では出色のこけしと言っても良いであろう。
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