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第273夜:久太郎のこけし(3)

Kyutaro_s34_kao 第224夜で小椋久太郎のこけしに触れて以来、関連する久太郎のこけしが手元に集まってきた。入札を始め、色々な機会で久太郎こけしに注意を払うようになったためであろうが、何かの因縁的な感じも覚えるのである。第226夜では、昭和35年の久太郎こけしを取り上げたが、そのこけしは前髪と横鬢が離れた少寸用の描彩であった。今回、前髪と横鬢がくっついた普通の描彩の久太郎こけしが入手出来たので、これを紹介し、改めて久太郎こけしの変遷を辿ってみたい。

Kyutaro_s34_hikaku 本稿で紹介する久太郎こけしは胴底に「34/2」の記入があり、昭和34年の2月以前に作られたものと思われる。『小椋久太郎と第十回伝統こけし三十人展』の小冊子の5頁、右から3本目に掲載されているこけしは昭和33年5月に東京こけし友の会が木地山を訪問した時のこけしとあるが、それと同種のこけしである。友の会の訪問に際し、久太郎さんに久四郎型の復元の依頼があったのであろうか。それまでの自身のこけしとは作風が異なり、木地形態、描彩とも久四郎こけしに倣ったものとなっている。そして、それ以降は「こけしブーム」とともに一般観光客の木地山詣でも盛んになる中で、この久四郎型がすっかり定着し、木地山こけしの代名詞となっていったのである。しかし作られるこけしは、旺盛な需要の中で大量生産に適した形・描彩に陥っていくことは免れず、その作行きが年とともに低下していったのは仕方のないことであろう。形態的には肩が撫で肩となり、描彩では色落ちを防ぐ意味もあったのであろうが、胴模様から緑色が消えて赤と黒の2色になった点が挙げられる。

今一度、最近集まった久太郎こけしを並べて見た。写真(2)は右から昭和16年頃(第266夜参照)、真中が昭和20年代後半(第224夜参照)、そして左が本稿のこけし(昭和34年)である。昭和10年代、20年代、30年代のこけしが揃ったことになる。ちょうど大きさも8寸強で揃っており、並べて比較するのにちょうど良い。昭和40年代以降の作はあまり変化がなく特に傑出しているものも見られないので、戦後の作はこれで十分だと思う。久太郎のこけしとしては、あと昭和初期(1桁代)の久四郎摸作時代の作が入手出来ればと思うのだが、これはなかなか難しいことだと思っている。

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