第272夜:入れ子こけし(6)
山形系の小林清さんと言うと清次郎さんの息子という印象が強く、まだまだ若手と思っていたが、実は私より1歳若いだけ(ちなみに誕生日は同じ)なので立派なベテランなのである。こけしは清次郎さんが偉大であっただけに未だにその後塵を拝した格好になっているが、木地技術においては遜色ないレベルに達していると言って良いであろう。働き盛りということもあって、その細工物は巧緻を極めている。前回の写真で示したように清次郎さんと同一寸法、同形態のこけしであるが、その中身は驚くべきものである。写真(2)に3分割された親こけしと中に入っている小物を示す。胴下部の分割部には蓋にこけしの顔が描かれた蓋物が入っている(写真の前列左端)。次の胴上部のくり抜き部分には、大きさ2寸の髷こけしが3本入っている。そしてくり抜いた頭部には各種のミニえじこが10個入っている。
さて、清さんの真骨頂はこの後である。先に示した蓋物は、これも入れ子になっていて、都合7個の蓋物が組み合わさっているのである。一番外側の蓋物は高さ1寸1分で径が1寸2分、最も内側の物は高さ3ミリで径6ミリの超ミニサイズ。こんな小さな物でも胴部と頭部の二段構成になっていて、頭部には顔が、胴部には花模様が描かれているのである。更に良く見ると頭部に描かれた顔は鼻の描法が割鼻と猫鼻とがあり、またどういう訳か2番目に大きい蓋物の鼻は写実的なものとなっている。この鼻の描法は他では見たことがなく、清さんの一種のシャレなのであろうか。
この入れ子こけしには、もう一つ細工が施されている。それは3本の髷ミニこけしである。このミニこけしも更に入れ子になっていて、それぞれ中には1寸のミニミニこけしが入っているのである。実に手の込んだこけしなのである。8寸の1本のこけしの中にこれだけの細工をしてあれば、「鑑定団」の中島誠之助氏ならずとも『良い仕事をしてますね!』と驚きの声が上がるのも頷けよう。
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