第280夜:ヤフオクの古品(鎌田文市)
この鎌文こけしを見直すきっかけとなったのは、やはり「こけし手帖」であった。これもヤフオクで入手した「こけし手帖(71号)」の特集記事では鎌田文市のこけしが取り上げられており、それを読んで改めて、文市のこけしを見てみた。弥治郎系の鎌田文市は明治33年の生まれ、佐藤勘内の弟子となって木地修行を行う。その後、遠刈田の作田栄利の指導も受けたため、その作るこけしには遠刈田系の影響も見られる。こけしは大正年間より作っており、その製作期間は長く作品の数も多いが、経年変化はそれほど激しくない。作品の評価は初期のものほど高い。「手帖71号」では中屋惣瞬氏が年代毎の特徴を述べている。
さて、本稿のこけしであるが、こけし自体には製作年代を示すような記載は見られない。ただ、その入手の経緯から昭和10年代の中頃から後半と考えられ る。その年代の鎌文こけしの特徴と比べてみよう。木地形態では胴は直胴で、胴裾も真っ直ぐになっていて昭和初期のような裾広がりではない。頭はやや縦に長く、頭頂部は丸みを帯びている。描彩では頭頂部のベレー帽状のロクロ線はかなり下がっている。また年代変化の大きな特徴である半円状の髪飾りは中央が赤で左右に緑が2つずつの計5個で、表面から見ると額一杯に描かれている。写真(3)の右が本品で左は戦後30年代の作。戦前の昭和12年以降と戦後とでは、髪飾りの数や場所は変わらないが、半円の山の尖り具合が戦後の方が急と言われている、この写真で見てもそれなりに確認できる。面描では、ともに大きな円らな瞳であるが、右の方が眉目の湾曲が大きく筆の勢いが感じられ、その分、生き生きとした表情になっている。鼻と口の大きさも右はほぼ同じで淑やかな感じであるが、左は口の方が大きく微笑んだ表情となっている。従って、ほぼ戦前の特徴を備えているが、両目の間隔が左右に開いている点などと考えると、10年代後半の作と考えるのが妥当と思われる。
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