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第287夜:渡辺求のこけし(?)

Motomu_s29_kao 第282夜の佐藤好秋の項で渡辺求のこけしに触れた。代作が作られるということは製作数が少なく入手難だったことの証明でもある。「こけし手帖(170)」に柴田長吉郎氏が『蒐集の思い出・渡辺求』という文章を載せている。ここでも求のこけしは入手難であったことが述べられており、昭和36年秋の旅行会の帰りに思いがけずも入手出来たことを報告している。今週初めにヤフオクに出ていた求のこけしは、表情がよく見る求とは異なる特徴があり、気になったので入札に参加した。運よく入手出来たので紹介したい。

弥治郎系の渡辺求は明治31年の生まれ。明治44年に佐藤伝内に弟子入りして木地修行を始めた。年期明け後は各地を転々とした後、昭和4年から岩代熱海(磐梯熱海)で木地業を開業した。昭和13年からは郵便局に勤め、こけし等は余暇に作るようになったため、以後退職する昭和36年頃まで製作数は少ない。こけしは明治末から大正初期の弟子時代から作ったとのことであるが、文献での紹介は「こけしの美(96)」の岩代熱海に来てからの作が最初と思われる。同書には(95)として昭和10年頃の作も掲載されている。丸頭で胴は裾広がり、目はぱっちりと大きめで明敏な表情である。

Motomu_s29_hikaku さて、本稿のこけしである。胴底は3ミリほどくり抜いてあり、そこに「岩代熱海 渡辺求」との署名がある。また「福島 29.10 八寸」と書いた紙片が貼ってある。入手者のものと思われ、昭和29年以前の作と考えられる。胴は全体にやや古色が付いているが退色は無く鮮明な色彩が残っている。やや横広がりの頭で、面描は眉、目、鼻、口に横鬢まですべて小振りで中央に寄っている。向って左目が下がって描かれているため愛嬌のある洒脱な表情となっている。求の面描、特に眉目は昭和10年代から左右均等にきっちり描かれており、また横鬢も長いので本作のような表情は類例を知らない。写真(2)の右が本作で左は30年代後半の作。胴模様は殆ど同じであるが、表情の違いは大きい。昭和20年代のこけしはそれほど多くなく、一種の空白地帯になっている。そんな1本がまた出てきたのであろうか。ネットオークションのお陰で、居ながらにして各地に眠っていたこけしを手にすることができるようになった。こけし蒐集の楽しみが増えたことは確かである。

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