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第289夜:「鑑賞」のこけし(渡辺忠蔵)

Watacyu_sabako_s37_kao 先日(5/31)締め切りを迎えたヤフオクの出品こけしの中に注目すべきこけしがあった。渡辺忠蔵の鯖湖型こけしである。出品値500円で私以外には応札するものがなかった。最終的には他に1名の入札があり価格もそれなりに上がったが、何とか私が落札することが出来た。このこけし実は私が長いこと探していたこけしであった。鹿間時夫氏の著書「こけし鑑賞」に掲載されている忠蔵による「きん写し」こけしだったからである。それに気付いた方は多くはなかったと思われる。今夜はそのこけしをじっくり見てみたいと思う。

「こけし鑑賞」は鹿間氏の独特な鑑賞眼からこけしを5つのグループに分け、それぞれのグループの特徴に当てはまるこけしを例示して、解説を加えたものである。掲載されたこけしの中には、その後「名品」とか「大名物」とか呼ばれているものも数多く含まれる。従って、掲載こけしの多くは戦前の古品と呼ばれるものであるが、それらの写しとして戦後の工人のこけしも紹介されている。第203夜の小林清次郎や第233夜の佐藤丑蔵がそれにあたる。そんな蒼々たるこけしの中に土湯系の渡辺忠蔵の「きん写し」が入っている。

Watacyu_sabako_s37 土湯系の渡辺忠蔵は大正10年の生まれ、母トヨは渡辺作蔵の3女で角治の妹にあたる。従って、忠蔵は作蔵の孫ということになる。但し、昭和34年より始めた木地業は見取りであり、特定の師匠を持たないためか忠蔵とそのこけしに対する注目度は低いようだ。こけしは当初は本人型を作り、37年より鯖湖型を、その後は作蔵型も作っている。「こけし鑑賞」56頁には、渡辺きんの原作とそれを元にした忠蔵の写しが掲載されている。その説明を引用しよう。『37年3月土湯の渡辺忠蔵を一晩がかりで口説き、喜平の了解も得て鹿間きんの摸作を作ってもらった。きん特有の鯨目の情味は出ないにしても、きりっとしまった格調の高さと気品は出してくれた。これは大成功であった。』と。本稿の作には胴底に入手者の記入と思われる「37.4.10」が見てとれる。「鑑賞」掲載品と比べると鼻がやや細長いが、きんの原品はむしろこちらに近い。この種の鯖湖型はいつまで作られたのであろうか。やがて忠蔵の鯖湖型の目は草書体風に崩れていく。この凛々しい鯖湖型は長くは続かなかったのであろう。

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