第309夜:小松五平のこけし(戦前)
大湯温泉の小松五平は明治24年の生まれ。明治40年、17歳で鳴子の高橋万五郎の弟子となり木地修業を始めた。翌明治41年に鉛に移ったのを皮切りに以後各地を巡り歩いたが、大正10年大湯に移ってからは同地に落ち着いて木地業に従事した。五平のこけしは大正期のものから昭和40年代始めまで数多く知られている。
さて、本稿のこけしは胴底に「陸奥売店」のゴム印が押されており、昭和15年頃の作と分かる。頭が角張り頭頂部が平たいのも同時期の特徴である。このこけしは大きさ尺で頭はやや大きく蕪型が著しい。胴はやや細身ですらっとしており中程でややくびれた五平独特の形態で古鳴子の面影を残している。丸く盛り上がった肩の山は無彩であり、胴上下には鉋溝を配し、ロクロ線も赤のみで簡素に纏めている。描彩面では何と言っても溌剌とした表情が秀逸である。前髪は頭頂部に近く、大きな横鬢を4筆で描いている。長くわん曲の大きい瞼にはアクセントも感じられ、丸い眼点がきっちりと正面を見つめている。けれんみのない実に良い表情である。胴模様は大寸のためか上部の横菊を2段に描き、その下に丸い正面菊を描いている。胴裾部の水流れがなければ、同時期の代表作として残せるこけしだと思う。
ほぼ同時期と思われる作を一緒に並べた。右のこけしは2月に纏めて入手した古品群の中の1本。胴模様など全く飛んでしまっているが頭の形と目の表情からやや前の作か。また、左のこけしは筆がやや細くなっておとなしい表情となっており、やや後の作と思われる。
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