第304夜:保存極美のこけし(斉藤源吉)
またまた間が空いてしまった。昭和から平成初めにかけて、こけしブームの頃には各種の催物や集まりがあった。その中に大浦泰英氏が主宰する「民芸こけしの会」という会があり、毎月「民芸こけし瓦版」という葉書の会報を会員に配布して、こけし界のニュースを知らせてくれた。この「民芸こけしの会」の年1度の集まり(頒布会)が毎年6月頃、東京阿佐ヶ谷の天祖神社で開催されていた。大浦氏が毎年産地を回って集めてきた新品を中心に、大浦氏の収集品も出品されていた。頒布の順番は抽選であり、私は籤運が悪く大抵は中ほど以降の順番で、目を付けていたこけしは売り切れていたことが多かった。そんな中、平成8年の頒布会では珍しく籤運が良く、今夜紹介するこけしを入手できたのである。
蔵王系の斎藤源吉は明治18年の生まれ。松治は従兄で、その松治につき明治34年(17歳)から木地修業を始めた。製作歴は長く、正末昭初のものから戦後30年代のものまで残っている。こけしブームの頃、源吉の人気は高く、私はなかなか入手の機会がなかった。本稿のこけしは大きさ9寸5分、保存状態の良さに惹かれて入手した。胴中央部よりやや下でくびれて下部は台状になっており、台状の部分には大きな牡丹が1輪、胴の上の部分には桜崩しが4輪描かれている。この桜崩しは内1輪には紫色が使われており、胴の形態から考えると師匠の松治型と言えるのかも知れない。松治は形態、胴模様とも多種多様なものを作っているが、源吉は胴は直胴、模様は重ね菊と桜崩し、頭は手柄と黒頭が殆どで、変わり型は少ない。胴下部、牡丹の向って右側には「寿」の字が書かれており、昭和30年代に入ってからの作と思われる。昭和30年代の作には端正な表情のものが多いが、このこけしは表情優しく、あどけない。
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