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第312夜:高橋武男のこけし

Takeot_s35_kao 前回は高橋武男の昭和20年代と思しきこけしを取り上げた。武男は言うまでもなく鳴子の老舗「高亀」の前当主、武蔵亡きあと戦後の鳴子こけしの中心的な工人として活躍した。高亀伝承の正統的なこけしを作ってきたが、そのこけしの人気は今ひとつ盛り上がらない。その原因の一つは、自身のこけしに変化があまり見られないこと、戦前の武蔵こけしの復元などは一切しなかったことかも知れない。武男は一本筋の通った工人であり、誰が言っても自身の信念を曲げることはなかったと聞く。今夜はそんな武男の昭和30年代のこけしを取り上げてみたい。

ここで示したこけしはヤフオクで纏めて入手したもの。前所有者が同時に求めたものと思われる。「高亀」は同じ老舗の「高勘」のように多くの型は作らず、武蔵が戦後に完成させた正統的なこけしをひたすら作り続けてきた。木地形態は直胴と小寸のたちこ、それにねまりことえじこがあるくらい。胴模様も、重ね菊、菱菊、楓、牡丹で大半を占めていた。ただ、大きさによって、描く胴模様にきちんとしたルールがあったようだ。少なくとも昭和30年代に「高亀」で作られたこけしはそうだったと思われる。

Takeot_s35_hikaku_2 本稿の5本こけしは中央の大きなものから8寸、7寸、6寸、5寸、4寸(たちこ)である。胴模様は代表的な3段重ね菊。7寸、8寸の所謂大寸物では胴上下と肩の山に赤と緑のロクロ線を入れている。更に7寸の重ね菊は花と葉だけであるが、8寸になると蔓も描かれる。6寸、5寸の中寸物では胴と肩の山にロクロ線はなく、胴下部に鉋溝が1本入っている。また、6寸は前髪が櫛形であるが、5寸は簡略形の一筆描きになっている。そして4寸のたちこは首は嵌め込みで、前髪は一筆描き、頭頂の水引も簡略形の4筆描きとなっている。胴模様の3段菊も一番上は蕾となっている。更に横鬢を見てみると7寸、8寸は3筆描きであるが、6寸以下は2筆描き、目は4寸、5寸は一筆目であるが5寸以上は一側目となっている。このように、大きさ毎に描彩のルールが決まっており、これによって1寸違えば同じ様式にはならないように工夫されていたのである。但し、このようなルールも40年代以降になると武男こけしであっても必ずしも当てはまらなくなってしまうのである。

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