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第316夜:「遊佐」福寿の初期こけし

Fukujyu_futuu_s32_kao 鳴子の福寿さんのこけしは私のこけし蒐集の原点であり、福寿さんの作ったものは幅広く集めることにしている。私がこけし蒐集を始めたのは昭和40年代の末からなので、それ以前に作られたこけしは中古市場で入手することになる。その大きな部分を占めるのがヤフオクであることは言うまでもない。先週、福寿さんのこけしが出品されていた。作風が初期のものであることは分かったが、特に胴底の署名が気になった。保存状態があまり良くなかったためか、当初、入札者は殆どいなかったが常連のZ氏、次いで別の方が加わり、落札価は結構高くなってしまった。今夜はそのこけしを眺めてみたい。

Fukujyu_futuu_s32 私がこのこけしで一番注目したのは、胴底に書かれた署名と日付であった。福寿さんのこけしはそれなりの数を集めているが、昭和20年代から30年代のものは数えるほどしかない。この時期、福寿さんは新型こけしに注力しており、旧型こけしは元々少ないのである。従って、その時期の福寿こけしを時系列に分析するのは私の大きな目標となっている。その目安の一つとして、私は「署名」に注目している。本稿のこけしには署名と共に、「三十二年九月十三日」という日付の記入がある。その字体から、これは福寿さんの自筆と思われる。購入者の要望に答えて日付を入れたものであろう。従って、この日付は製作日ではなく購入日の可能性が強い。ところで、福寿さんはこの32年の4月に結婚して遊佐家の養子となり、本家の「高勘」から独立している。結婚前のこけしを9月に売ったという可能性もないではないが、結婚後のこけし、即ち「遊佐福寿」になってからのこけしと考えるのが自然であろう。とすれば、このこけしは遊佐福寿としては初期のこけしと言うことが出来るのである。

それではこけしを見てみよう。大きさは8寸。形態は一般的な「高勘」の標準的なもので通常「普通型」と呼ばれるものである。(ちなみに勘治型だと肩の丸みがもっと大きく、胴裾が台状になっている。) 頭部の描彩、頭頂部の水引は5筆、鬢飾りは3筆と標準的だが、横鬢が4筆なのは大変珍しい。福寿さんの普通型では横鬢は尺でも3筆であり、4筆は他に見たことがない。前髪の不均衡さ(向って右が長い)と右眉毛が上向きで右目(いずれも向って)が下がっている点はかなり改善された。眼点はやや大きく、目は中央に寄っておぼこい表情になっている。表情は初期作(第67、68、69、251夜)の面影を残していると言えよう。一方、胴模様は、胴上下および肩の山のロクロ線の様式、横菊と正面菊の組み合わせも標準的なものであり目立った特徴は見られない。

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