第320夜:喜平こけしのドングリ眼の秘密
その記事は「こけし春秋(NO.88)」に掲載された今井氏『作者不詳のこけし(その弐 鯖湖こけし)』である。その中で今井氏は1本のこけし(5寸9分)を示し、そのこけしが一見すると喜平のこけしと思われるが、昭和16年の喜平こけしと比べると全く異なる情味を持ち、姿、胴模様、筆使いも異なり、明らかに別人の作であると述べている。また、同型のこけしとして「木の花(第弐拾九号)」記載の『こけし文献手かがみ(7)』に載っている<こけし>の渡辺喜平を挙げている。また「古計志加々美」掲載の(34)渡辺喜平も同型で、これは「こけしの世界」に採録されている。写真(2)を見て貰いたい。右より①「こけし春秋」、②「古計志加々美」、③「東北のこけし」、④「筆者のこけし(第263夜参照)」である。こう並べて見ると、確かに①のこけしは他とは雰囲気が違う。但し、①、②は共通点が多い。胴模様のロクロ線の様式が同じこと、前髪が頭頂部の太い蛇の目に直接接していること、横鬢が小さいことなどで、これらは③、④とは明らかに異なる。ところで、今井氏は①のこけしを「角治の古型」ではないかと推測されている。その今井説に従って考えてみて、③、④が喜平であることは間違いないであろう。では②はどうであろうか。どうしても目の描彩に角治とは違和感を感じるのである。それは単に使った筆の太さによるものなのかも知れないが・・・。①は角治、②は喜平の初期作で角治のこけしを忠実に真似たもの、③、④は喜平が自分流に描いたものとは言えないだろうか・・・。
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