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第322夜:「たつみ」以前の巳之助こけし

Mino_syusuke_s34_kao 昨夜は、「たつみ」の指導で始めた周助型の復元以前に作られた佐藤昭一のこけしを紹介した。今夜は同じく「たつみ」以前の佐藤巳之助のこけしである。「たつみ」以前、すなわち昭和40年以前の巳之助こけしは相当数作られており、決して珍しいこけしではない。それを敢えてここで取り上げたのは、極端にまで大きい前髪の特異性にある。「たつみ」以降とは全く異なる情味を持っており、「原」に拘らない巳之助本来の周助こけしに対する想いが表れているのではないかと思うからである。

Mino_syusuke_s34 佐藤巳之助は明治26年の生まれ。周助の次男である。15歳より父周助について木地修業を始めた。戦前作は昭和15年作が「こけし辞典」に載っている。戦後は主に周助の昭和型と称するものを中心に作っている。「こけし春秋(NO.76)」に戦前・戦後の作例が載っている。昭和32年作は「東北のこけし」にも掲載されており、周助の原作にも近く、均整のとれた佳品である。この昭和30年代の一連のこけしでは34、35年のこけしが際立て特異的なのが分かるだろう。

本稿のこけしは、その胴底に「34.11.10」の鉛筆書きがある。これは入手日と思われるが、34年作と見てよいであろう。特徴は何といっても雄大な前髪である。顔の半分を覆うほどに描かれた前髪は、両横髪も内に寄って描かれているために、面描部分を圧迫している。そのため、眉・目・鼻・口は中央部に寄ってちんまりと描かれている。このような描法だと本来なら暑苦しさを感じるのだが、不思議とこのこけしからはそんな感じは受けない。むしろ前髪を眉まで伸ばして揃えた童女を思わせる。これを「たつみ」以後の同型の作と並べてみれば、その違いは歴然であろうが残念ながら手元にない。「たつみ」以降のこけしが余りにインパクトが強く、その評価も高いことから、「たつみ」以前のこけしは余り語られないが、そこには「たつみ」以降とは違った温かみが感じられ、鑑賞に値するこけしと思う。

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