第319夜:喜平こけしの変遷
喜平の戦前作については第263夜で昭和10年代中頃の作を紹介した。それはドングリ眼であったが古風な面影を持っていた。また第81夜では小寸(3寸)ではあったが昭和10年代後半の鯨目を紹介した。更に第130夜では昭和21年の作を示している。これらと比べて、今回のこけしの位置づけはどうなるのかを探ってみた。
写真②をご覧頂きたい。本稿のこけしは右から2本目、大きさ5寸、胴模様は赤黄のロクロ模様である。各こけしの年代は右から昭和16年頃、本こけし、17,8年頃、21年という順になる。形態的にはこの5,6年で相当変化しているのが分かると思う。特に戦後作となる21年作(左端)では顕著だ。描彩面ではどうであろうか。真ん中2本のロクロ模様は時期もそれほど変わらないことから大差ない。両端のあやめ模様は、右端の微かに残る赤の痕跡から、真中の上向きの花弁が戦後作では蟹の鋏のように大きくなっているのが分かる。さて面描である。戦前喜平の代名詞である「象鼻」は21年作でも踏襲されている。目は戦前作は間隔が開いてゆったりしているが、21年作では中央に寄ってきており、目自体も小さくなっている。前髪は右端の16年作では髪先が櫛の歯のように細かく描かれているが、本作では髪先が 分かれてきており、左2本では幅が狭くなり両端が長く垂れている。横鬢も右端は縦に長く、本作では豪快に太くなり、やがて左2本のようにこじんまりと小さくなってくる。このような特徴から、本作は17年頃、その左の3寸は18,9年頃と推定してみた。
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