第325夜:2本の文吉のこけし
ここのところ忙しく、本ブログの更新も延びてしまい訪ねてくれた方々には申し訳なく思っている。今夜は最近ヤフオクで入手した2本の文吉こけしの話をしたい。共に7寸の手絡で重ね菊模様のこけしであるが、落札価には10倍の差が付いたのである。今や人気絶大の文吉こけしであるが、この差はどこから来るのであろうか。しかも低価で落札出来たこけしも昭和41年という第2のピーク期の作品であり、決して凡作ではないのである。高価となった文吉は2週間ほど前に初期庫治と一緒に出品されていたもので、この庫治と文吉を狙っていた方が結局庫治を落札出来たためか文吉の方は深追いせず、私が入手出来た次第である。低価だった文吉は入札者は7名いたが競り合いとはならず2千円にも届かない価格で落札出来てしまった。
写真(2)の右が高価の文吉で左が低価の文吉。左の文吉は胴底に「41.12.10」の鉛筆書きがある。さて、佐藤文吉のこけしには2つのピークがあると言われている。「木の花(第八号)」の『戦後の佳作(其の八)』で文吉を取り上げた北村勝史氏によれば、その一は昭和36年春から同年一杯。その二は昭和39年末から43年末に至る4年間とある。ということは左の文吉はピーク期のこけしと言うことになる。それでは右のこけしはいつ頃の作であろうか。30年代に入ってからの文吉こけしは「東北のこけし」と「こけし手帖(579)」に作例が載っている。本稿右のこけしは、頭が縦長で胴に比べて小さめである。作例と比べると目の描彩は32年作に近いが頭頂部の角張は少なく34年作に近い。また胴下部に紫のロクロ線が入っていることから33年辺りと推測される。第一のピーク期前の作ということになる。ところで文吉のこけしの代表作というと黒頭のこけしが圧倒的に多い。蒐集家からの要望も黒頭が多く、特に第二のピーク期には文吉も黒頭を精力的に沢山作ったのであろう。文吉と言えば黒頭というイメージが定着し、人気も黒頭に集中して、その分手絡は例えピーク期のものであっても低価で入手出来たのではないかと思うのである。
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