第342夜:佐藤誠次のこけし
肘折系の佐藤誠次は明治35年の生れ。丑蔵の末弟である。特定の師匠は確認されていないが、当初は文平、茂吉の指導を受けたとされる。後に及位に定着してからは叔父文六の影響を受け、その作風を継承するようになった。昭和38年に逝去。こけしは戦前から作っているが製作数は少ない。戦後は昭和30年代前半の作が知られている。「こけし辞典」によれば、戦後の誠次のこけしは一重瞼に変わったと記されているが、本稿のように二重瞼の三日月目も作られているのである。頭は縦長で胴はふっくらとしており、やはり肘折系の木地形態である。前頭部一杯に描いた振分けの前髪が豪快である。きりりとした三日月目が清々しい。写真(2)の2本、胴上下の赤と緑のロクロ線が配色は同じであるが位置と場所が異なる。胴模様が向かって右は菱型菊の三段重ね、左は普通の3段重ね菊であるが、それに合わせて上下のロクロ線を
変えたのであろうか。この2種類の重ね菊模様は、丑蔵、文吉にもよく見られ、肘折系文六系列の特徴と言えるのかも知れない。次に頭頂部を見てみよう。頭頂部は大きな前髪の後ろに緑点を入れているが、写真(3)に示した通り、左は緑点のみであるが、右は緑点の周りを囲むように飾り線を付けている。この辺りも、この2本のこけしの製作時期に多少違いがあることを示しているのかも知れない。共に署名はなく、前所蔵者が手書きで「誠次」と書き入れている。
| 固定リンク
「肘折系」カテゴリの記事
- 第969夜:ヤフオクの極美古作(第2弾)(2014.10.11)
- 第958夜:肘折のこけしたち(重之助)(2014.08.30)
- 第906夜:友の会新年例会(H26年)(2014.01.27)
- 第888夜:鈴木征一の初期作(2013.12.10)
- 第872夜:昭三のこけし(2013.10.28)
コメント