第341夜:佐藤正一(最晩年)
「こけし辞典」によれば、佐藤正一は昭和40年5月2日に中風で倒れたとある。本稿のこけしは胴底の署名で「佐藤正一 六十才 昭和四十年四月」と書かれている。従って、このこけしを作ってから倒れるまで1か月もなかったということになる。辞典では更に「病気になってからも弘道の木地に描いていた」とあるので、正一のこけしとしては40年5月以降のこけしもあると思われるが、自挽きのこけしとしてはこの辺りが最晩年に当たるのではないかと思う。写真(2)に39年作と並べてみた。右端は39年、真中は39年9月20日の署名である。形態的には大きな違いはないようだが、5寸という大きさのためか胴に比べて頭がやや大きく、胴が直線的という感じを受ける。胴模様も右端とほぼ同じである。肩口の3本のロクロ線が緑になっているが、これは製作時期とはあまり関係なく、緑と紫が作られている。一方、表情にはかなりの違いが見られる。一番の違いは眉・目の左右の間隔であろう。39年作では、眉・目は横鬢に近く、左右の間隔が開いておおらかな表情であったが、40年作では目が中央に寄って近視眼的である。あどけない表情ではあるのだが、視線が定まっておらず空虚な感じを受ける。
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