第338夜:旅行会での発見(2)
西田コレクションのこけしは保存状態が良いものが多い。この石蔵も作りたてのように鮮明な色彩が残っている。石蔵こけしの胴模様は胴全体を埋め尽くすように、細かい模様を丁寧に描きこんでいる。特に初期の作品では着物模様に団扇まで描かれている。と、ここまでは「原郷のこけし群」をみれば分かることである。ところが、この石蔵には裏模様も描かれていたのである。これは現物の胴裏を見て、初めて気が付いたことだ。写真(2)右がそれである。木地山系ではよく描かれる菊であろうか。何らかの花模様が、表の緻密な模様とは裏腹にさらさらと簡素に描かれている。石蔵の描彩力の非凡さが窺われる。第268夜で後年の同型の石蔵こけしを紹介したが、こちらには裏模様は描かれていない。流石の石蔵でも、こだわりの胴模様は次第に簡略化されていき、裏模様も描かれなくなってしまったのであろう。残念なことである。
もう1本紹介しておこう。こちらは弥治郎系の佐藤伝喜の戦前作である。伝喜の戦前作は少なく、この保存の良いこけしは伝喜の戦前の作風を知る上で貴重である。これも裏面を見ると裏模様が描かれていた。写真(3)右がそれである。第247夜で戦前の佐藤雅雄のこけしを紹介したが、これにも大振りの旭菊が2輪、裏模様として描かれていた。これら弥治郎系のこけしは頭が回る訳ではないが、表(前)から見ても裏(後)から見ても良いように描いていたのであろうか。このような心配りは戦後になると無くなってしまったのであろう。
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