第351夜:30年代の秋山一雄(鳴子型)
蔵王系の秋山一雄は昭和10年の生まれ、秋山慶一郎の次男である。12歳頃より父について木地の修業を始める。当初は新型の木地挽きが中心であったが、39年に慶一郎が没してからは伝統こけしに力を入れるようになった。そのこけしに関して、「こけし辞典」では『初期の作品は晩年の慶一郎こけしを忠実に伝承し、強さにかけた作品が多かったが、・・・』と評している。さて、本稿のこけしは胴底に「昭和Ⅲ三年一月」の記入が丁寧な筆文字で書かれている。また「久松」の文字も見られ、久松氏旧蔵品かと思われる。「木の花(第参拾弐号)」には33年4月の慶一郎こけしが写真掲載されている。四角い頭、太い胴、一側目のように見える瞳など、本稿のこけしがこの慶一郎こけしを忠実に真似ているのは一目瞭然であり、こけし辞典の記述を裏付けている。一雄のこけしは慶一郎より目が小振りで左右の間隔が離れ気味で、より幼い童女の表情となっており実に愛らしいこけしである。保存状態も良く、一雄の初期のこけしとして貴重な作品と言えるだろう。写真(2)左は35年頃の慶一郎。胴がやや細くなり中反りも大きくなっている。胴裾の赤ロクロ線も細くなり、重量感が乏しくなっているのが分かる。
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