第357夜:新春「ひやね」入札会
丑蔵のこけしは湯田時代(昭和19年まで)と、それ以降の遠刈田時代に大きく分かれる。湯田時代も昭和10年以前は三日月目の格調高い作が多いが、10年代も下がるに従って目が下がり一種ユーモラスでグロテスクでもあるような独特の表情に変わってくる。その表情は奥山喜代治にも通じるものがあり、如何にも「肘折的」という感じがするのである。
本稿のこけしは湯田後期、昭和15,6年頃の作であろうか。典型的な「下目」のこけしである。一種ニヒルな頬笑みを浮かべた瞳は真っ直ぐにこちらを見つめていて、こちらの心まで捉えてしまう。何とも魅惑的な表情である。胴模様は、丑蔵得意の重ね菊を4段に配している。各々の花に動きがあり画一化されていない。さて裏を見てみると、桜の花が一面に描かれている。あまり見なれない模様だと思って「辞典」の『丑蔵』の項を読んでみると次のように書かれている。『昭和12,3年頃長寿庵で販売した小田島邦太郎名儀のこけしは、丑蔵が長寿庵の依頼で、デザインの指定を受けて作ったものである。・・・、裏模様は桜の花弁を印で押し、墨で枝を描いたものであった。この裏模様はアヤメ、牡丹等と共に丑蔵名義のこけしにも用いられた。』 また、胴は頭への嵌め込みになっており、しかもかなり緩いために、南部系のキナキナのように動くのである。当初、これは木の経年変化で緩くなったものと思っていたが、「古計志加々美」の中でも、この時期の丑蔵こけしの説明で『・・・昭和15年の製品で、櫻材を用いてキナキナ風を加味した木地であって、・・・』とあることから、当時はそういう風に作っていたものと思われる。
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