« 第356夜:親子のこけし(六郷満・仁美) | トップページ | 第358夜:新春「ひやね」入札会(2) »

第357夜:新春「ひやね」入札会

Ushizo_yuda_s16_kao 今日、勤めの帰りに神田の「ひやね」に寄ってきた。昨日開札があった入札の落札品を受け取るためである。今年の「ひやね」の入札・即売会は9日(土)から11日(月)の3日間であった。9日の即売(抽選)には約50人、10日の即売には20人ほどの愛好者が集まったとのこと。また、新年恒例の福袋は今年も作ることが出来ず、今後も難しい模様である。当初は9日か10日に出掛けるつもりでいたが所用で行かれず、結局入札のみに参加することとなった。入札に入れたのは佐藤丑蔵、佐藤慶治、佐藤正一の3本。うち、丑蔵と慶治が落札できたので、早速今日取りに行ったのである。口絵写真は落札した丑蔵。

Ushizo_yuda_s16 Ushizo_yuda_s16_ura 丑蔵のこけしは湯田時代(昭和19年まで)と、それ以降の遠刈田時代に大きく分かれる。湯田時代も昭和10年以前は三日月目の格調高い作が多いが、10年代も下がるに従って目が下がり一種ユーモラスでグロテスクでもあるような独特の表情に変わってくる。その表情は奥山喜代治にも通じるものがあり、如何にも「肘折的」という感じがするのである。

本稿のこけしは湯田後期、昭和15,6年頃の作であろうか。典型的な「下目」のこけしである。一種ニヒルな頬笑みを浮かべた瞳は真っ直ぐにこちらを見つめていて、こちらの心まで捉えてしまう。何とも魅惑的な表情である。胴模様は、丑蔵得意の重ね菊を4段に配している。各々の花に動きがあり画一化されていない。さて裏を見てみると、桜の花が一面に描かれている。あまり見なれない模様だと思って「辞典」の『丑蔵』の項を読んでみると次のように書かれている。『昭和12,3年頃長寿庵で販売した小田島邦太郎名儀のこけしは、丑蔵が長寿庵の依頼で、デザインの指定を受けて作ったものである。・・・、裏模様は桜の花弁を印で押し、墨で枝を描いたものであった。この裏模様はアヤメ、牡丹等と共に丑蔵名義のこけしにも用いられた。』 また、胴は頭への嵌め込みになっており、しかもかなり緩いために、南部系のキナキナのように動くのである。当初、これは木の経年変化で緩くなったものと思っていたが、「古計志加々美」の中でも、この時期の丑蔵こけしの説明で『・・・昭和15年の製品で、櫻材を用いてキナキナ風を加味した木地であって、・・・』とあることから、当時はそういう風に作っていたものと思われる。

|

« 第356夜:親子のこけし(六郷満・仁美) | トップページ | 第358夜:新春「ひやね」入札会(2) »

肘折系」カテゴリの記事

古品」カテゴリの記事

オークション」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 第357夜:新春「ひやね」入札会:

« 第356夜:親子のこけし(六郷満・仁美) | トップページ | 第358夜:新春「ひやね」入札会(2) »