第362夜:小林善作のこけし
「こけし辞典」の小林善作の項には次のような説明が載っている。『戦前は昭和10年から同16年まで、若干こけしを作った。従来善作名義のこけしは2種類あり、<加々美><系譜><こけし><事典>などに紹介されたものをA型としておく。表情はきつく鋭く、筆致が力強い。目はつり上がって、横鬢が長い。胴模様は重ね菊が4つ描かれている。B型は<美><これくしょん復刊・33><風土>などに紹介されたもので、筆致がやや弱く飄々と描き流した感がある。胴模様は正面菊を重ねて描いており、A型の重ね菊より達筆でない。時代的にはA型の方が古く、B型は昭和14,5年からである。』
これを読んで、<加々美><系譜><事典><美>を調べ、<風土>を見てみると、本稿のこけしにそっくりなこけしが載っているではないか! そう言えば、このこけしには「しかま」という印があったのを思い出し、<風土>の写真と仔細を比べてみる。大きさは6寸4分でほぼ同じことが分かった。そして決定的だったのは、胴下部の赤ロクロ線のところの水濡れの跡である。これにより、本稿のこけしが「こけし・人・風土」に掲載されていた鹿間旧蔵のこけしであることが明らかになった。A型のような迫力のある目でないが、二重の下の瞼からはみ出すように打った眼点は鋭く、横に広い前髪と下にいくに従って太くなる豪快な横鬢と相俟って、見る者に強い印象を与えている。一方、胴模様にはそんな気負いはなくさらさらと描いているのが好対象である。なお、<風土>にはB型の善作が2本載っており、大きい方(尺3分)は同じものが<美>にも掲載されている。そちらは前髪、横鬢とも短く、鼻は割れ鼻で眼点のはみ出しもない。同じB型でも受ける印象はかなり異なる。
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