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第372夜:俊雄の孫持ちこけし

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土湯系の名門、湊屋の直系である佐久間俊雄のこけしは昭和52年頃から58年頃までの僅かな期間のものしか残されていない。その間の作風の変化は大きく、その希少性と相俟って、人気の高いこけしの1つとなっている。そんな俊雄のこけしも一時期は量産されたらしく、デパートの即売でもかなりの数を見かけたものである。しかしそれも一瞬のことで、いつの間にか俊雄のこけしは抽選品として僅かな数が見られるに過ぎなくなってしまった。今夜は先日のヤフオクで入手した俊雄の孫持ちこけしを紹介しよう。口絵写真は俊雄こけし。

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そんな俊雄のこけしが東京こけし友の会の頒布に出たことがあった。昭和53年6月の例会である。しかも、そのこけしは子1本と孫2本を中に入れた孫持ちの入れ子こけしであった。入れ子こけしは中に小さなこけしを入れる関係上、胴は太い方が作り易く、胴の細い土湯系には不向きと思われる。しかし俊雄の父芳雄はこの入れ子が得意であり、5重の入れ子等も作っていた。俊雄もこの父の優秀な木地技術を継いでおり、入れ子も作ったのであろう。友の会の頒布品は親、子が坊主で孫は坊主と髷の2種類であった。残念ながらその時私はそのこけしを入手することができず、その後に出た入札でもあと一歩というところで逃していた。念願かなって入手した本稿のこけしは、親と孫が髷で子は坊主である。親こけしは材に桜を用い、頭は嵌め込みで回り、頭の中にはガラも入っていて振ると音がするのである。6寸のこけしにこれだけの手をかけている製作には驚嘆するばかりである。胴模様も親は多色のロクロ線で華やかに、子は赤と黒の返しロクロでシンプルに、孫は赤、黄、緑と紫の帯に一筆目で幼児っぽさを出している。

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この時期の俊雄こけしの特徴は、何と言っても穏やかで明るく素直な笑顔であろう。上に湾曲した二重の瞼は端が微かに離れて緊張感をほぐし、見ているものに安心感とやすらぎを与える。しかし、このような穏やかな微笑みは長くは続かなかった。程なくして、俊雄こけしの表情は緊張感に満ちた鋭いものとなり(第249夜参照)、やがてそれは病的と思える程に先鋭的なものとなっていく。従って、俊雄の短い製作期間の中では、この時期が精神的にも最も安定していたのであろう。俊雄こけしのこの穏やかな微笑みを大切にしたいと思うのである。

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