第391夜:専蔵の伊太郎型
津軽系の毛利専蔵は大正5年の生まれ。毛利茂太郎の長男である。父茂太郎について木地修業をし、こけしは戦前から作っている。戦後の描彩は妻の「たま」作が殆どであり、専蔵描彩作は定かではない。さて、佐藤伊太郎のこけしは津軽系の中でも稀品と言われており、残るこけしは少なく、津軽特有の土俗性とグルーミーな情味が特徴である。初めに伊太郎に挑戦した佐藤善二とその息子の佳樹、伊太郎の土俗性を巧みに取り込んだこけしを作る今晃、上手さでは随一の笹森淳一、また阿保六知秀や小島俊幸も伊太郎型を作る。それらと比べて、本稿の専蔵こけしはどうであろうか。画一的な胴のロクロ線、硬筆の顔の描彩と、伊太郎の情味とは程遠い作風である。にもかかわらず、何ともホッとさせてくれるこけしなのである。真ん丸な眼点の童女が大人を真似て塗ったような赤い唇がかすかな微笑みを浮かべている。それは健康的で、ちょっとおませな東北娘を表しているように思える。
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