第404夜:珍しい角四郎こけし
蔵王系の石沢角四郎は明治27年の生まれ、13歳で斎藤松治の弟子となり、その後は源吉の指導を受ける。大正4年(22歳)に年期が明けた後、大正7年に釈迦堂に戻って開業した。こけしは蔵王時代から作ったと思われるが、昭和15年以降のものしか確認されていない。角四郎こけしに関する評価を「こけし辞典」で拾ってみると、『<ガイド>掲載の昭和33年ごろの作品は、表情も弱く特色の少ないこけしであったが、かえって、昭和41年ごろの晩年になってから、いぶし銀のような美しさが出てきた。角四郎こけしの本来は華麗の中にある洗練された重厚さ、ひなぶりにある。』と。
そこで、本稿のこけしを見てみよう。大きさは尺3分、蔵王系らしく胴が太く重量感に富んだこけしである。胴底には署名と一緒に六十八才と年齢も書かれており昭和37年頃の作と思われる。面描は三日月目の描線が細く、遠くから見ると小さい眼点だけが鋭く光る。一方で黒頭の頭頂部は黄、緑、赤、緑のロクロ線が弥治郎系のベレー帽のように色鮮やかに描かれている。そして胴模様である。黄色く塗られた胴一面に、真っ赤な花が4輪大きく描かれており、そのインパクトは大きい。この花模様、当初は蔵王系特有の桜崩しを大きく描いたものかと思っていたが、それにしては花弁が多過ぎる。旭菊を横に寝かせたようにも見える。他にこのような模様は見たことがない。「愛こけし」125頁に昭和38年の角四郎こけしが載っている。瞼の見えない極細の描線は本稿作と同様である。そのこけしの胴模様も蔵王系としては珍しく、鳴子風の重ね菊の下にあやめを描いている。理由は分からないが、30年代の後半のある時期、角四郎は変わった胴模様を描いていたことが伺われるのである。
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コメント
現在の作者には出せない,深さがありますね。
投稿: しょ~じ | 2010年5月17日 (月) 08時39分
胴模様、見たことのない模様です。
なんとも可愛らしいお顔、しみじみしてしまいます。
投稿: kuma | 2010年5月17日 (月) 09時31分