第430夜:田中敦夫のこけし(初期作2)
写真(2)は今回の入札で入手したこけしの内の3本。胴底には入手日付と思われる日付が書かれた紙片が貼ってある。日付は3本とも「三五.五.七」で、昭和35年の5月に入手したということであろう。大きさは向かって右から、7寸、8寸2分、6寸である。真ん中のこけしは黒頭で胴が括れ、胴裾が台状になった松治型。頭は縦長で下部が細くなっており頬がこけた形態になっている。左右の2本は、縦長ではあるが頬はこけていない。面描は細い面相筆で大きくゆったりと描いている。特に右の手絡模様はこの傾向が強く、左2本とはやや異なる。一方、胴模様はぼってりとした筆で描かれ、左2本の桜崩しは横になびく炎のようである。敦夫さんの若さ溢れる素直なこけしである。
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コメント
なんと穏やかなお顔。
中と左の胴模様は、何の花なのでしょう。
投稿: kuma | 2010年7月13日 (火) 09時02分
kumaさん、コメントありがとうございます。
あの胴模様は源吉からの伝承で桜崩しが変化したものだと思います。第431夜の写真をご覧下さい。右端は栄治郎型で、胴上部の模様は明らかに桜崩しです。本項写真の中央のこけしは形態は松治型ですが、胴模様は栄治郎型を踏襲しています。従って、この胴模様は桜崩しだと思います。各々の花弁が太く重なり合い、向きも横方向になびくようになったので、通常の桜崩しとは大分雰囲気が異なりますね。模様の文様化(抽象化)の一例でしょうか。これが更に進むと第404夜の角四郎の胴模様になっていくのかも知れません。こうなると、もう桜崩しではなく別の模様と言えるでしょうね。こけしは胴模様1つをとっても、色々研究すると面白いものです。
投稿: 国恵志堂 | 2010年7月14日 (水) 08時39分