第437夜:老女の厚化粧(太治郎晩年作)
「木の花(第参拾号)」の『連載覚書(29)太治郎こけし』によれば、太治郎のこけしは「前期」「中期」「後期」に分けられ、「後期」は昭和11年以降だという。そして、この時期のこけしについては『目は大きくたれ気味となり、前髪も長くたれ下がって、だれた表情となって作行が極端に落ちてしまう』と述べられている。また、「こけし辞典」では『体力の落ちた晩年作では目鼻しだいに下方に移り、大きな鼻とあいまって、にやけた表情となった。このころの物は老女の厚化粧といわれ、・・・』と記載されている。本稿のこけしは、この後期の特徴に合致しており、後期から晩年作と考えられる。それでも多少の違和感を感じるのは、胴のロクロ線模様が通常の様式と異なるのと、眉・目の描線が細く、色も薄いことである。太治郎のこけしの胴模様は、本人型と言われる波線模様と古型といわれる返しロクロ模様の2種があり、その様式には殆ど変化は見られない。本稿のこけしの胴模様は本人型であるが、肩の部分に赤2本、紫3本のロクロ線が余分に入っている。このようなロクロ模様は「愛玩鼓楽」(38)に類例を見るのみである。几帳面に規格通りに描き続けられた太治郎の胴模様も、晩年には崩れてきたということなのかも知れない。また「こけし辞典」によれば、こけしの製作数は、昭和15,6年ころは年に数本しか作れず、17年には製作を止めているから、晩年の製作数は少ないと考えられる。本稿のこけしは眉・目の描線に力がないことから、かなり晩年の作と考えられ、その晩年作が文献等にあまり載っていないことから、見慣れない太治郎こけしと思ってしまったものと考えられる。
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コメント
老女の厚化粧…
いやらしい色気のある、とても魅力的な表情だと思います。目が離せません。
投稿: :☆:*・*:☆:*・*:☆: | 2010年7月31日 (土) 21時11分
お顔の比重がだいぶ低い位置になるので
下からと正面からではずいぶんと違う表情に見えるんですね
こけしもいろんな角度から顔見て見ようと思いました
投稿: kuma | 2010年8月 2日 (月) 07時28分