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第446夜:菊池孝太郎のこけし

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菊地孝太郎のこけしを私は1本も持っていなかった。戦後の目尻の大きく下がったこけしには食指が全く湧かなかったからである。「美と系譜」に掲載されている戦前の一側目のこけしは可憐であどけなく気になるこけしではあったが、そのようなこけしと巡り会うこともなかった。昭和40、41年頃に「たつみ」が作らせた戦前4寸の復元作は確かに良い出来と思われたが、これすら目の前に現れることはなかった。そんな中で、本稿のこけしがヤフオクに出品されたのである。幸か不幸か、あまり注目を浴びず、6千円に満たない価格で落札することが出来た。今夜は、そのこけしを紹介しよう。

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菊地孝太郎は明治28年の生まれ。6歳の時に青根の木地業菊地茂平の養子となる。明治40年、小学校を卒業してからは小原直治の弟子となって木地修業を始める。昭和7年に青根木工組合を作って木地業に力を入れたが3年で解散して、昭和13年には豆腐屋に転業した。従って、戦前のこけしは昭和13年以前のものと言うことになる。今回、孝太郎の戦前作を調べるために各種の文献を探して見たが、掲載こけしは僅かなものであった。「こけし辞典」に掲載されている昭和10年作は、下目の一側目で愛らしいこけしである。「原郷のこけし群(第2集)」には2本の孝太郎こけしが載っており、73番が本稿のこけしとほぼ同じである。眉・目の筆致鋭く、筆の勢いで眉・目の湾曲が大きくなっている。眼点は小さく表情は鋭い。胴は戦前の遠刈田の定番である3段の重ね菊をゆったりと描き、上下を紫の2本ロクロ線で締めている。孝太郎のこけしではピーク期に当たるのではないかと思う。戦後の垂れた目尻で細かい重ね菊のこけしとの落差は余りにも大きいものがある。

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