第451夜:善吉(小)
大きさ3寸1分、木形子洞頒布のラベルが貼ってあり、古形子洞頒布品である。木形子洞頒布での善吉の頒布は昭和7年であるので、本稿のこけしは昭和7年作ということになる。岩本善吉は明治10年の生まれ。明治34年に東京浅草で木工旋盤を習ったのが木地業の始まりである。大正12年より中の沢で木地業を始め、こけしを作り始めたのは昭和元年頃とされる。昭和9年には亡くなっているため、こけし製作は9年間ほどで残る作品は多くない。「木の花(第弐拾七号)」の連載覚書『善吉こけし』では、この9年間を4期間(前期、中期、後期、最晩年)に分けており、木形子洞頒布は中期にあたる。ギョロ目の特異な表情で善吉の代名詞になっているのは後期のこけしである。中期のこけしはおとなしい表情のこけしが多いのであるが、本稿のこけしは小寸ながら目は大きく見開き眼点にも勢いがある。丸い口に打たれた紅は、舌を出しているようにも見える。何とも、こましゃくれた表情であるが小寸であるがゆえに愛らしい。この小こけしには既に後期のギョロ目の前兆が垣間見れるのである。今回の入札で出品された3本の善吉の中では、一番「強烈な」善吉の雰囲気を伺わせている。今回出品された古品こけしは文献等で紹介されたものではないから、新たに発見された善吉こけしと言うことが出来る。既発表の小寸こけしと比べても出色の出来ではないかと思う。80年近く前のものであるにもかかわらず、色もよく残っており、高々10センチに満たない小品ではあるが、その存在感は絶大なものがあると思う。
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コメント
なんとも愛らしく憎めないお顔ですね。こんな小寸が届いたら、お喜び、充分伝わります!
投稿: kuma | 2010年9月19日 (日) 06時50分
可愛らしいと言うより、小生意気な顔ですよね。口を曲げてふくれているようにも見える。でも確かに憎めない顔。当時はこんな顔をした子供がいたんでしょうね。
投稿: 国恵志堂 | 2010年9月20日 (月) 22時59分