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第453夜:善吉(大)

Zenkiti_s7_dai_kao_2先日のヤフオクの木形子洞頒布こけしの出品には善吉のこけしが、(大)・(中)・(小)と3本出ていたが、魅力を感じたのは(中)と(小)で、(大)の善吉は当初入札に参加するつもりはなかった。もちろん、懐具合も考えてのことである。ところが、今回の入札は締切時間が同じということで、予定が変わってしまったのである。入札状況から、(中)と(小)を両方落札するのが難しいと思えたのである。中でも(中)こけしはかなりの競り合いとなっていた。その内に(大)の時間が迫ってきたため、時間を延長させるためにとりあえず入札したら、最初に落札してしまったのである。こうなると、もう勢いであり、3本全部が欲しくなってしまい、最後まで競り合うことになってしまったのである。今夜は、その善吉(大)のこけしを紹介する。

Zenkiti_s7_dai_hikaku

善吉(大)こけしは大きさは8寸。胴底は、善吉(小)(中)と同じく「通し鉋」であるが、その上から「善吉」のラベルが貼ってある。但し、木形子洞頒布のラベルではない。木形子洞頒布のラベルが剥がれてしまったので、このラベルを代用で貼ったものかも知れない。この善吉、手元に届いてみると写真では分からなかった難点が幾つか見つかった。先ず、背中に深い傷があり、そこから細い溝が出来ている。後頭部にヒビ割れがある。左の側頭部に水流れ跡か大きなシミ跡があり、その部分の赤いカセが消えているなど。写真では分かり辛い部分であり残念であるが仕方がない。昭和の初期、こけしに使う材料など余り物の木材であったはずで、それから80年余りも経っているのである。さて、木形子洞の頒布を中心とする中期の善吉こけしは、ギョロ目や三白眼といった後期の強烈なこけしではなく、いたっておだやかでもの静かなこけしである。それは、「木の花」では『うつろな表情』とか『もの哀しさ』とか言った言葉で表現されている。

Zenkiti_s7_dai_label

Zenkiti_s7_dai_kawa

本稿のこけしは、胴はエンタシスから直胴に近くなっている。これも、この中期の善吉こけしの特徴である。胴模様は、一輪の大きな牡丹花を中央部の赤・緑のロクロ線で2つに分断して描いている。このように、半分の花模様を描くのもこの時期の特徴で、後期になると、牡丹や桜の花が丸ごと描かれるようになる。次に表情であるが、眉は湾曲がなく直線的で勢いがない。目も細めで眼点にも力がなく、視線が定まらない。渋みの中に一抹の寂しさを感じると言えようか。「木の花」の解説の最後にエピソードとして次のような記載がある。「こけし・人・風土」の第141図の解説に『頭と胴の裏に木地の傷があって黒く見える。たいていのものにある。おそらくこの怪異な作者は1本出来上がった毎に「えい・・・一丁上り」と叫んでぶったたいたのだろう。』とある。これは傷ではなく、木の皮であると。本稿のこけしにも右側頭部に確かに木の皮があり、実物で確認することが出来た。なお、「木の花」掲載のこけしには中期のものが多く、その解説では『今回同人持ち寄りのこけしに、世評の高いこの時期(後期)が少なく、特に大きい花が上下2輪のこけしが1本もないのが特徴であった。入手の機会がなかったわけではない。花で飾ったギョロ目はオーバーで、結局あきがくる』と。善吉こけしに対する玄人筋の評価が垣間見れて面白い。

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コメント

見事なトリオを入手されましたね。 この子等も一緒にいて
幸せでしょう。

投稿: logos | 2010年9月20日 (月) 10時41分

同じ時期の作で大、中、小の3本組。母親と姉妹でしょうか。生まれて(作られてから)からずっと一緒に居たのでしょうから、確かに離ればなれにならなくて良かったのでしょうね。大事にしなくてはいけませんね。

投稿: 国恵志堂 | 2010年9月20日 (月) 23時07分

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