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第477夜:ゆき子の睫毛こけし

Yukiko_haruji_matuge_kao

今月の1日に井上ゆき子さんが亡くなった。昨年、事故に遭ってから1年余りの闘病生活であった。私がこけしの収集を始めた昭和40年代の後半にゆき子さんは春二の弟子となり、こけしを作り始めていた。木地も自分で挽くという本格的な女性工人は未だ希な頃であった。その後、夫の四郎さん、春二さんを相次いで亡くす中でも着実に力を付け、人気工人の一人として多くのファンを楽しませてくれた。改めて、ゆき子さんのご冥福をお祈りすると共に、そのこけしを紹介したい。

Yukiko_haruji_matuge_hikaku

改めて、手持ちのゆき子さんのこけしを取り出して眺めていると、今まで気が付かなかったが睫毛の付いたこけしがあることが分かった。写真(2)の3本がそれである。いずれも、胴の中央部にくびれがあって、赤と紫のロクロ線が中央にあり、胴下部には旭菊を描いたものである。春二の昭和14,5年代のこけしを写したもの、あるいは参考にしたこけしであろう。写真向かって右端のこけしの「原」は西田コレクションの春二9寸5分(「原郷のこけし群(第2集)」の138番)と思われる。但し、「原」こけしには睫毛は描かれていない。従って、この睫毛はゆき子さんが付け加えたことになる。昭和30年頃の春二の睫毛を参考にして付けたのであろう。他の2本の「原」も戦前のもので、睫毛は無かったものと推測される。

写真(3)に春二の睫毛こけし(上)と写真(2)右端のゆき子こけし

Haruji_yukiko_matuge

(下)の目の部分を拡大して比較してみた。写真では分かり難いかも知れないが、春二の睫毛は両目とも向かって右斜め上方向に向かって描かれているが、ゆき子さんの睫毛は両目とも中央に向かって描かれている。これも春二こけしにそのような睫毛があったのかも知れないが、見たことがないので定かではない。もともと円らな瞳のこけしであるだけに、睫毛をつけることによってより愛らしさが増す効果はあったと思われる。

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コメント

ゆき子さんの訃報は、彼女のファンを少なからずも悲しませましたね。実はその事故の直後、こけし先輩から、ゆき子さんの何とも言えぬ愛らしい姫達磨を見せていただき「この工人さんは先日事故に遭われて、意識不明」と聞いたのです。もし復帰されたら、あの素敵な姫達磨をお願いしようと、密かに願っておりました。素人の私にも、魅力溢れる作品をお作りになった工人さんだけに、悲しいです。

投稿: kuma | 2010年11月16日 (火) 20時20分

ほんとうに残念です。本格的な女性工人の先駆者でしたからね。春二の華麗な弥治郎こけしを女性ということもあって、より華やかに開花させた功績は忘れられません。ぜひ、はる美さんにもその伝統を引き継ぎ、発展させて貰いたいものです。

投稿: 国恵志堂 | 2010年11月16日 (火) 23時49分

 昭和46~47年頃でした。 ゆき子さんのご自宅を訪ねました。ゆき子さんがちょうど 2.7センチの5本セット2組と、同じ大きさの姫ダルマ3個を作り上げたところでした。「初めてこんなに小さいこけしを作りました。こんなにも神経を使うとは思ってもいませんでした」と。「もう2度とは作らないでしょう」と。
 譲ってもらえますか? 快諾を得て私の手元にこの5本セットと姫ダルマが2個あるのです。あとの1組はどこにいったのでしょうか。色も薄れておりますが、いつかはゆき子さんのお手元にお返しをしようと思っておりました。
 美人のゆき子さんの笑顔が忘れられません。     合掌

投稿: ただちゃん | 2010年11月22日 (月) 18時18分

昭和46、7年頃と言うと、ゆき子さんがこけしを作り始めて、未だ間もない頃でしょうか。春二の型を一生懸命勉強して作っていた頃ですね。ゆき子さんのそんなに小さい豆こけしは見たことがありませんから、それが最初で最後だったのかも知れませんね。機会があれば、ぜひはる美さんに見せてあげたら良いと思います。

投稿: 国恵志堂 | 2010年11月22日 (月) 19時39分

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