第478夜:評価の低い忠蔵こけし
先ず、文献での評価をおさらいしておこう。「木の花(第拾五号)」で中屋惣舜氏は忠蔵こけしのピーク期は2つあり、第1期は昭和12~13年頃、第2期は70歳~73歳頃までとした上で、『特に70歳より73歳までの選ばれた忠蔵こけしには、戦前の第1ピーク期の忠蔵こけしと比べて、少しも遜色がない質の高い優作が多い。少なくとも昭和16年以降、とりわけ昭和20年から原の町最終期までの作品と比較すればその差は明確である』と断じている。また「木の花(第四号)」で北村勝史氏は戦後の忠蔵こけしを2期に分け、その第1期を”原の町期”として『・・・、こけしの表情には厳しさが薄れ、一様におっとりした感じのものが多い。土湯系の渋さもない。目は下がり、胴模様を含め全体の筆致が弱い。かせは小寸ものでも3巻き。署名のあるのは少ない。花模様が中心で、当時の新型ブームの影響が混じる』と。ところで「忠蔵と第二回こけし三十人展」の口絵写真に載っている忠蔵こけしは何となく気になるこけしであった。
先日、それと良く似たこけしがヤフオクに出品され入手したのが写真(2)右のこけしである。「三十人展」の口絵写真は口が笑口であるが、こちらは普通の口であるために受ける印象はやや異なるが同時期の作品であろう。本稿のこけしは署名もなく(写真(3)右)年代も不明であるが、「三十人展」のこけしは昭和28年(62才)とある。描彩にはエナメルを使っており、ニスを塗ってあるために描彩の保存は良い。こけしの鑑賞は北村氏の記載の通り。確かに筆致に鋭さも張りもない。しかし、北村氏も言っているように「おっとり」とした感じが見るものの心を安らかにしてくれるこけしである。やや太めの胴も肩口からのカーブが心地よい。新型の影響と言っても、決して甘いだけのこけしではない。しっかり土湯の伝統に則ったこけしであることに異論はないだろう。写真(2)左も少し前にヤフオクで入手した忠蔵こけし。こちらは胴底に62才との署名がある(写真(3)左)。こちらは、通常の染料を使用しており、胴も膨らみが無くなりスマートな形態になっている。鯨目の上瞼の湾曲が大きくなり独特な表情になっている。同じ62才作でもその差は大きい。一般的には右のこけしから左のこけしに変化していったと考えられるが、同時期に、右は一般向けのこけしとして、左は収集家向けのこけしとして作られたと考えるのも面白い。
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コメント
この型のこけし、先日2本だけ家に来てくれました。作者はこの方の息子に当たる佳隆さんのもので、10年ほどお世話になっている方からです。あまりの美しさに、その息子の通さんのも是非手にしてよく眺めたいと思い、みちのくこけしまつりに足を運びました。ご存知のように会場後、間もなくこけしは売り切れ。仕方なく注文する形で来年を待つこととなりました。
投稿: kuma | 2010年11月22日 (月) 07時34分
そうですか。佳隆さんのこけしが手に入りましたか。佳隆さんにしろ、通さんにしろ、忠蔵さんより上手いかも知れませんね(笑)。でも忠蔵さんのあの「ぽわっとした」あどけない暖かさを出すのは難しいかもしれませんね。忠蔵さんの中古でも、評価が低い(?)せいか5千円ほどで手に入ります。ぜひ忠蔵さんのも入手して下さい。
投稿: 国恵志堂 | 2010年11月22日 (月) 19時30分