第489夜:58歳作の護こけし
写真(2)の2本は胴底の署名から、いずれも58歳作のこけしである。1本1本では分かり難いが、このように並べて見ると、その違いは分かり易い。57歳作、59歳作の作風から、向かって左のこけしが58歳の前半で、右のこけしが58歳の後半と思われる。その境目がどのあたりなのかは明確には分からない。先ず木地形態では頭の形が、前半(左)では正方形に近いのが、後半(右)ではやや縦長の長方形になっている。一番の違いは顔の表情である。前半は眉・目とも湾曲が大きく、黒目がちで健康的な明るい笑顔である。後半は目の湾曲が少なくなり切れ長の水平に近い瞳となる。眼点もやや小さくなり、ややきつめの笑顔となる。もう1つの大きな特徴は横鬢の長さである。前半では鬢は短く上端は眉と目の中間くらいである、一方後半では鬢が長くなり上端は眉の辺りまで上がる。私が好きなのは前半の方である。このこぼれんばかりの笑顔は何物にも代え難い護こけしの財産であろう。
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コメント
56~60歳位までの護のこけしが好きで、記事が出ると直ぐ反応してしまうしょーもない奴です画像左のこけし、本当にこの時期だけのものですね。何も知らない蒐め初めの頃、初見の護こけしが植木氏蔵の同じような雰囲気のもの(←『愛こけし 改訂版』に載っているものです)でした。それで「護という作者の定番型はコレだ」という勘違いをし、血眼になって探し回ったけれど、当時多く出回っていた護こけしは悉く違う顔だったのでかなり落胆しました。…今は「笑い話」ですけれど。
投稿: こけりん | 2010年12月22日 (水) 22時16分
ほんとうに集め始めの頃は、本に載っているのと同じ物が買えるものだと思って産地まで出掛け、がっかりして帰って来たものでした。こけしは手作りだから作った時期によって作風や出来に違いがあることが分かったのはかなり経ってからのこと。今はその中から、これはという1本を探すのが楽しみになりました。ともすると直助-秀一-英太郎ばかりが脚光を浴びていますが、護のこけしはもっと評価されて良いこけしだと思います。
投稿: 国恵志堂 | 2010年12月22日 (水) 22時40分
私が収集を始めた頃は,既に故人でした。(昭和58年)
難しい人だと聞いてますが,会ってみたかったです。
投稿: しょ~じ | 2010年12月24日 (金) 10時40分
私も実際に会ったことはありませんが、そういう話は聞いたことがあります。文助さんも気難しかったと聞いています。戦前からの工人さんにはそういう人も結構居たんでしょうね。
投稿: 国恵志堂 | 2010年12月27日 (月) 11時26分