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第486夜:久志のこけし(戦前)

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昨夜に引き続き、弥治郎系の新山家のこけしを見てみたい。今夜紹介する久志のこけしは、「ぽっぽ堂こけしギャラリ-」を掲載しているA氏より譲って頂いたもの。A氏は戦前の久志の良いこけしを数本持っており、その内の1本である。退色が全く無い保存状態極美の素晴らしい作品である。このようなこけしを譲って下さったA氏に感謝したい。口絵写真は、その久志のこけしの顔アップ。

久志の戦前作について。「こけし辞典」の解説を引用しよう。『昭和10年以前のものはほとんど残っていない。現在残る戦前の作は昭和13年除隊帰郷してから同16年再び応召するまでの作である。久治に比して表情は可憐でおとなしい作風である。初期のものは直胴が多く、胴をくびらしたのは昭和15年からである。』

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さて、本稿のこけしは大きさ尺2分、胴中央部がくびれて2本の紫色の帯を巻いている。胴は細めですらっとしており、やや大きめの頭とのバランスは良い。胴底には「二千六百年」との書き込みがあり、昭和15年の作と分かる。くびれ胴は辞典の解説とも合っている。胴のロクロ線および赤い襟と裾はぼってりと筆太に描かれていて古風な雰囲気を持っている。面描も赤い前髪、3本の鬢飾りとも筆太で大らかに描かれている。視線を下に向けた表情はあどけなさの残る童女の面影を宿している。戦後のピーク期の研ぎ澄まされたような緊張感とは別物の、見るものの心を穏やかにする静かなこけしである。

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