第491夜:久弥の粂松型
土湯系、佐藤久弥の粂松型については第223夜で紹介した。しかし、その時のこけしは、粂松型とは言え、久弥流にアレンジしたものであった。223夜の繰り返しになるが、久弥は昭和43年5月に鹿間時夫氏の勧めにより粂松型(玉山粂松)の製作に挑戦した。「こけし辞典」を引用すると、『43年5月の初作は素朴で荒いタッチのものだったが、6月巨頭を作り情味あふれる優作をものにした。可憐なアヤメ模様を胴の中ほどに描きロクロ模様の色彩バランスも正確を得て土湯近来の収穫であった』と。そして、43年5月、6月、9月の写真を掲載している。
さて、本稿のこけしは2本(大きさは約7寸)ある。2本とも同時に出品され、両方を入手することが出来た。最低価500円で、他にも沢山出品されており、注目を浴びずに最低価で落札出来るかと思っていたが、流石に他にも目を付ける人がいて、1本2500円程で落札となった。鹿間氏が「巨頭」と言ったのは43年6月作で、これは巨頭とともに胴はエンタシスに近い。一方、43年9月作は頭が小さくなると共に胴は直線的になる。写真(2)の2本は、胴は直線的で9月作と近いが、頭は大きめで、表情は6月作に近い。従って、6月から9月の間に作られたものと思われる。この2本、表情にやや違いが見られたので、両方入手した。「辞典」6月作の表情は左のこけしに近い。右のこけしは目鼻が中央に寄って集中度の強い表情になっている。左のこけしは描線にたどたどしさも見られ、「原」を意識して描いたことが伺われる。一方、右のこけしでは、そのような意識はなく、一気に描いているのが分かる。従って、時期的には左の作の方が早いのであろう。私は粂松型に興味があったので、久弥のこのようなこけしがあることは知っていた。この粂松型は製作時期が短く作られた数も多くはないであろう。このようなこけしを手に入れるには、こまめなチェックが必要なのである。
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