第501夜:天理勘治復元秘話(1)
私が長年集めている勘治型こけしの中で是非欲しいこけしがある。「こけし辞典」の口絵写真にカラーで紹介されている福寿作9寸勘治型である。同辞典の遊佐福寿の項を見ると次のような記述がある。『・・・最近、婢子会の<日本土俗玩具集>図版により勘治9寸を復元したが、かなりの出来であった。』と。そして、その製作時期は昭和44年10月となっている。土俗玩具集には4本の勘治(勘治一家)のこけしが掲載されている。中央に堂々と立っているのが、有名な深澤勘治(深澤コレクションにある勘治のこけし)であり、その向かって左横に立っているのが福寿さんの復元の元となった9寸勘治である。この復元作については福寿さんを訪問した折、何度か話したことがあったが、福寿さんの所には残っていなかった。後になって、天理参考館の勘治が公開され、土俗玩具集の9寸勘治は、天理参考館の勘治(8寸5分)と同型のもの(同一ではないらしい)と判明するのだが、この昭和44年の時点では天理勘治は知らされてなく、福寿さんは土俗玩具集の不鮮明な写真を参考にして、この勘治型を作ったのである。
平成9年11月に福寿さんを訪問した折、1本のこけしを見せてくれた。写真(2)右端のこけしである。44年に作った9寸勘治型を思い出して作ったのだと言う。私が話していたことを覚えてくれていたんだと感激した覚えがある。この9寸勘治型は翌平成10年11月に訪問した時にも作ってくれており、それが左のこけし。そして、今回ヤフオクで入手したのが真ん中のこけし。やや長めの頭と反りの少ない直線的な胴など、胴模様の蕾の添え葉の描法以外は、右のこけしが44年作に一番近いようだ。真ん中のこけしは右とほぼ同型であるが、頭が丸くなり胴の反りも大きくなっている。それに対して、左のこけしは木地形態は真ん中に近いが胴下部が台状になっている点が異なる。
また、写真(3)に示すように、頭頂部の描彩が右と真ん中は前髪後の黒い結び目がないが、左は結び目がある点に違いが見られる。これらは、現物を見ていないので、福寿さんの想像で作られたのであろう。
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