第525夜:震災が運んでくれたこけし
南部系の常川新太郎は明治40年、盛岡市の生まれ。仙台工芸指導所で木地技術を習得した後、一時、鈴木清の職人を勤めた。昭和11年に遠野に移り、そこで木地業を開業した。こけしは昭和12年に藤原政五郎を参考にして作り始めた。いわゆる戦前の新型こけしと言っても良いであろう。新太郎のこけしは、木地は新太郎ほか数人おり、描彩は弟の雄三郎である。
写真(2)左4寸、右2寸である。2寸は作り付けであるが、4寸はキナキナ型のゆるい嵌め込みで、頭がクラクラ動く。新太郎の戦前作は「古計志加々美」に昭和13年作が、「こけし辞典」に昭和15年作が掲載されているが、いずれも細身でスマートな形態である。また「愛こけし」には戦後の32年作が載っているが、こちらも細身である。本稿のこけしは出品者特有のラベルが貼ってあり(但し、一部しか残っておらず、日付は分からない)、その他の出品作の年代から推測して昭和16年頃と思われる。この時期の新太郎こけしは、この写真のようにやや太めの瓢箪型をしていたのが分かる。そのせいか4寸という小寸にも関わらず存在感のあるこけしとなっている。2寸の方はまさにミニチュアこけしであり、胴底の畳付きまで丁寧にとられており、木地、描彩とも手抜きが一切されていない作品である。
| 固定リンク
「南部系」カテゴリの記事
- 第925夜:こけしとえじこのセット(2014.04.09)
- 第910夜:友の会2月例会(H26年)(2014.02.24)
- 第903夜:金三の梅吉型(2)(2014.01.15)
- 第902夜:金三の梅吉型(1)(2014.01.14)
- 第901夜:藤井梅吉のこけし(2014.01.13)
「古品」カテゴリの記事
- <番外>こけし談話会(2015.05.11)
- 第1000夜:ステッキこけし(小関幸雄)(2015.04.19)
- 第999夜:極美古品(伊豆定雄)(2015.04.13)
- 第998夜:佐藤慶治のこけし(H27花見)(2015.04.01)
- 第997夜:鶴松のこけし(2015.03.28)
コメント