第515夜:国敏の治助型初期作
こけし手帖(599)には「阿部国敏工人のこけしと年代変化」と出して、国敏こけしの変遷が掲載されている。それによると、『阿部国敏は阿部シナの孫で敏道の2男。木地は陳野原幸紀、描彩は祖母のシナと父の敏道から習った。習ったとはいえ、自分で描彩したこけしを見せて助言を受ける事の繰り返しであった。平成7年末頃から店に出す様になったので、友の会の頒布(平成8年2月)は初期作に近いとのことです。』とある。
写真(2)右が本稿のこけし(8寸)で、左は平成8年7月に「つどい」で入手した尺2寸。手帖掲載の尺2寸(平成8年8月)と同時期の作。この頃は「鹿間治助」を原にしていたとのこと。この2本を比べて見ると、木地形態、胴のロクロ線模様、頭部の描彩などは殆ど一緒と言ってよい。ただ面描だけがやや異なる。左の方が「原」により近い表情になっている。それに比べると、右のこけしは眉が短く太く、眼点が大きい。また、右の眉尻と目尻を意識的につり上げて描いているのが分かる。そのため、眼点が大きいのに甘い表情にはなっておらず、緊張感に溢れた若々しい表情になっているのが好ましい。このような表情は初期の極一時期にしか見られない。平成6年の作とすれば、本格的に店に出す前の習作に近い頃のものであろう。阿部家伝来の治助型を習得すべく励んでいる、意欲溢れる作品と言えるだろう。
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