第526夜:慶一郎のこけし(昭和20年代)
写真(2)の左は昭和35年頃の鳴子型8寸。右の本稿のこけしで同じく鳴子型の7寸。但し、左は下瞼のある二側目であるが、右は一側目である。その木地形態にかなりの違いがあるのが分かる。先ず、頭の形。右は横広の平頭で戦前作の俤を残しているが、左は縦長になってきている。次に胴の形態。右は胴に殆ど反りが無く直線的であるが、左は胴中央部でかなり反りが入っている。これは、本家の鳴子系こけしにも見られる現象で、遠く離れた鶴岡に居た慶一郎のこけしにも同じことが起きていたということは、世の中の流行だったのだろう。さて、このこけしの製作年代であるが、「木の花(第参拾弐号)」の『慶一郎のこけし』の⑰植木蔵7寸に近い。ということは昭和20年代後半であろうか。また、「木の花」の解説では、花芯の黄点にポスターカラーを使用していると記載されているが、本稿のこけしもポスターカラーであり、その記述を裏付けている。唯一、気になるのが、本稿こけしの肩の山の盛り上がりである。⑰の肩の山は写真(2)左のこけしと同様であり、⑰以降の「木の花」掲載こけしも同様である。すなわち、本稿のこけしの様な盛り上がりは見かけないのである。あるいは、⑰より古く昭和20年代中頃の作なのであろうか。今後の研究課題ではある。
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コメント
何もないと思っていても、あるんですね。
私なんか、いったい何を見ているのか、と思います。
たくみによいものを探し出す眼力、脱帽です。
投稿: A | 2011年3月26日 (土) 00時12分
日に何回も見ていますからね。こけしが好きというだけです。でも、今まで気に掛けなかったものの中にも思わぬ掘り出し物があるんですね。それを見つけるのも楽しみです。ただ、写真だけからの判断なので、現物を見てガッカリすることもあるますね(苦笑)。
投稿: 国恵志堂 | 2011年3月26日 (土) 08時28分