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第535夜:評価の低い忠蔵こけし(3)

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あの東日本大震災からちょうど1ヶ月が経った。長かったような短かったような、感じ方は人それぞれ違うと思う。何もかも流されてしまった被災地では、僅かながらも復興の土音も聞こえて来るようになった。まさに日本人の底力を見る思いだ。今は日本全体で頑張らなくてはいけない時だ。そんな思いに浸っているところに大きな余震が襲ってきた。自然の脅威は強大だ。まだまだ油断は出来ない。さて、今夜は先の古品15本に含まれていた忠蔵のこけしを紹介したい。口絵写真はその忠蔵こけしの表情である。

タイトルにある「評価の低いこけし」として昭和20年代の忠蔵こけしを、第478夜と第521夜で紹介した。戦前のこけしで評価の高いのは昭和12、13年頃で、14,15年まではその俤を残しているとされる。それ以降のこけしに関してはあまり紹介されていない。どちらかというと「評価の低いこけしの部類」に入るのであろうか。

Cyuzo_s17_hikaku

写真(2)右が本稿のこけし。昭和15年以降の忠蔵こけしについては「愛こけし」に昭和16年作が写真紹介されている。本稿のこけしは、それとほぼ同時期の作と思われる。戦前のピークと言われるこけしは、平頭に細い鯨目で、点状に打たれた小さな眼点が緊張感のある鋭い表情を醸し出している。昭和15年を境として忠蔵こけしの表情は大きく変わってくる。頭の形も頭頂部が大きく、下部が窄まった逆台形状となる。大きな鯨目は湾曲も大きくなり、丸い眼点が印象的である。やや上方を向いた視線は健康的で明るい表情と言えるだろう。ピーク期のこけしとは全く雰囲気の異なる表情ではあるが、これはこれで見所があるのでないだろうか。同時期の喜平のこけしも大きな鯨目が特徴的であり、関連があるのであろうか。写真(2)左は第521夜で紹介した昭和20年代のこけし。本稿のこけしの特徴を引き継いでいるのが分かる。

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