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第555夜:「市井にひそむ逸品」(新山栄五郎)

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先週(25日締切)、ヤフオクに戦前の一群のこけしが出品されていた。その出品写真に原稿の写真も載っており、コメントとして『専門誌にて「戦前のごく限られた短い一時期のこけし作品群」として紹介されたコレクションです。』と記載されていた。その原稿の著者名と著作日から、該当する時期の「こけし手帖」を探すと、第291号(昭和60年6月号)に『市井にひそむ逸品』と題した記事が載っているのを確認できた。著者のN氏が訪ねた知人宅で、一群の戦前のこけしを発見し、その概要を記載したもので、その知人が昭和13年から17年の初めにかけて山形で蒐集したこけしだという。N氏は既に亡くなられていることから、その知人のこけしをN氏が入手し保管していたものが、その原稿と一緒に業者に売却され、それが今回、ヤフオクに出品されたものと推測される。但し、今回出品されたのは手帖に載っていたこけしの一部であり、残りも業者が買い取ったのかどうかは分からない。今回の入札では私は5本のこけしを入手することが出来た。それらを順次、紹介したいと思う。口絵写真は、今夜紹介する新山栄五郎の顔アップである。

新山栄五郎のこけしを紹介するのは初めてなので、まず栄五郎の略歴から記載する。弥治郎系の新山栄五郎は明治4年、弥治郎の生まれで、新山栄七の長男である。13、4歳の頃から父につき木地修業。明治21年に二人挽きから足踏みロクロに切り替えた。以後、弥治郎で木地業を続け、昭和21年12月、76歳で没した。こけしは昭和初期のものから知られており、巨頭で胴のバランス良く、目鼻極端に細く鋭く気格に富んだ、はりのある傑作であったと「こけし辞典」で評されている。晩年は胴が太くなり「馬のだんべ」と言われた。

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写真(2)が今回入手したこけし。大きさは7寸。全体的に古色が付いて汚れているが、色彩は頭部を除いて、割合良く残っている。胴底は四つ爪で「鎌先」の角印が押されている。頭はやや縦長で「頭でっかち」の印象を受ける。頭頂部には大きな赤い円が描かれ、その周りを赤と紫の太ロクロ線、緑の細ロクロ線で囲んでいる。退色のため確認出来ないが黄色も使われているかも知れない。胴は肩の詰んだ直胴に赤、緑、紫、黄色のロクロ帯が蒔絵状に引かれている。特に胴中央部の紫の波線が効果的なアクセントとなっている。面描は小振りの目鼻口が中央に寄って描かれ愛らしい。小さな頬紅は円状ではなく筆先でチョン付けた雫状となっている。

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